『体育館のステージの上にあった』
 という智成の言葉に、

「あ、男子バスケ部の竹浦のだ」
 と、少し大きな声で言う美利。

 思い出して少しだけ達成感を味わっているようだ。

「あぁ、竹浦か。サンキュ、栗岡」
 じゃぁな、と言って校内へと戻っていった。



 しばしの沈黙。

 もうすぐバスも来る時刻だ。
 他の生徒たちも集まってきた。

「くー」

 おもむろに話しかけてきた智樹に『何?』と正面を向いたまま返事を返す美利。

「智成先輩のこと、好きだろ」

 少し顔を覗き込んで面白そうに智樹が話しかけてきた。

 普段から比較的ポーカーフェイスが身についている美利だったが、この時ばかりは少なからずの動揺が見て取れたようだ。

「図星だな」

 優越感に浸りながらさらに顔を覗き込む智樹に苦笑いと共に小さいため息で返事を返した。