「そうなのか?くぅ」
琢己の言葉を真に受けているのか、どこまで冗談としてとっているのか、そもそも琢己の言葉は本気なのか冗談なのかもわからないまま竜は切なそうな口調で美利にそう聞いた。
「違うっつってんでしょうが」
しっかりと呆れながら竜に返事をしている美利もこんな放課後の会話も悪くないなと思っていた。
「っていうかさぁ」
別の方向から声が聞こえてくる。
「お前らって付き合ってるの? ずっと気になってたんだよな」
椅子の背もたれに肘をかけ、だらけた格好で美利と智樹を見ながらそう聞いてきたのは和巳だった。
「全然」
間髪入れずに返事を返した美利に、
「めちゃくちゃ即答だな」
と呆れ気味でいう智樹。
しかし別に残念そうな表情は見せていない。
「ということはだ。俺にもまだチャンスはあるってことだな、くぅ、好きだ――……」
勢いに任せて美利に抱きつこうとした竜のおでこに入った美利の握りこぶし。
周りの人間も『可哀想に』と言うくらいで救いの手を差し伸べようとはしない。
竜とはそうゆうキャラなのだ。