さっぱりとした性格の持ち主である美利にとっては、女子と行動するよりも男子と行動するほうが楽なようで、そして不思議と女子はあまり近付いてこなかった。
犬猿しているわけでもないだろうが徐々に男子との会話が増えてゆく彼女にクラスの女子も近づきづらくなってきていたのだろう。
横山和巳と岡崎琢己は卓球部に所属。
五十嵐竜は帰宅部だ。
竜いわく、
「三年間しかない学校生活、部活でつぶされちゃたまったもんじゃない」
とのこと。
彼の性格を考えると『らしい』と言えばらしい発言かもしれない。
「くぅぅー」
背後から聞こえてくる声に振り向くどころか返事もしない美利。
返事が来ないことを分かっているのか、
「俺と付き合ってくれ」
と続ける竜。
「嫌だ」
即答しているのを見ればわかる通りこの会話も最近では決まった一連のものとなっている。
基本的に美利は自分のことを美人だとか可愛いとか思ったことは無い。
むしろその逆で自分を好いてくれる人が出てきたならば『なぜこんな不細工を?』と聞き返すタイプだ。
そして今回の事でも竜に対して奇特な人間だなという印象を持っている。