「関節が結構固まっちゃってて。寝てる間にギブスもはずれて治ってはいるんだけど歩くのは不自由してるかな」

 そう言いながら右足もゆっくりと動かした。

「私は花瓶の水を取り替えに行ってくるわね。くーちゃん、そこの椅子に座って。近くで話してちょうだい」

 智樹の母親は笑顔で廊下へ出て行った。

 おどおどしながら椅子に座る美利。

「なんだか、聞いていた雰囲気と違う気がする」

 そう言って智樹は笑った。

「もっと気さくでそっけない性格だって竜が言ってたんだけどな」

 その言葉を聞いて『やっぱり記憶は戻っていないんだな』と気落ちする美利。

「ねえ、手を繋いでもいい?」
「え、い、いいよ」

 美利からの急な申し出に少しだけ顔を赤らめる智樹。
 恥ずかしがる姿は美利の知っている智樹だった。