智樹の入院している病院の三階。
 和巳から電話をもらって数日後の事。

 記憶をたどって病室の前まで来てみた美利だったが勇気がなくてそのドアを開けられないでいる。

 『結局僕は弱いんだ…』

 そう思って踵を返そうとした時ドアが開いた。

 中から智樹の母親が出てくるところだった。
 手には花瓶を持っている。

「くーちゃん?」

 智樹の母親は美利の顔を見るや否やぱっと笑顔になった。

「くーちゃんよね? そうよね? 待ってたのよ、来てくれないかなって待ってたのよずっと」

 そう言って美利の手を引いて中に招いた。

「智樹、くーちゃんが来てくれたわよ」

 窓から入る太陽の光が心地いい。

 午後のおやつだろうか、プリンを食べている智樹の姿が目に入った。