「智樹は五年くらいの記憶を無くしているらしい。俺たちとは初対面になる。
 事故にあったことも説明してあるけどまだ信じられないみたいだ」

 意識を取り戻したのは二日前だった。

 今日和巳が見舞いに行って分かったらしい。

 智樹は今自分は中学生だと思っている。
 高校生活は勿論、高校に入学したこと自体覚えていない。

 友達であることは伝えてもいいが、難しい話はせずになるべく短い時間でお願いしたい。

 それが母親からの願いだった。


 ゆっくりと病室のドアを開ける。
 母親らしき女の人が会釈をしてくれた。


「智樹、さっき話していた友達を連れてきたよ」

 和巳が声を掛けて、その後ろから竜が顔を出す。