「智樹は…」

 エレベーターが三階を表示する。

「……覚えていないらしい」

 一瞬身体が固まる二人。

 扉が開き、下りるぞと竜に引っ張られた。

 一気に気持ちが落ち込む。

 覚えていないと言うのはどういう意味だろうか。

 事故の記憶がないと言うことだろうか。

 それ以上のことを竜は語らない。


 廊下の奥に視線を送ると部屋の前に立つ和巳を見つけた。
 駆け寄る美利。

「ねえ、竜が『覚えてないらしい』って言ってたのどういう意味?」

 和巳の手を握って美利はまっすぐにその目を見る。