「ほんとに何をするんだよ、今日はちゃんと髪の毛を梳かしてきたのに」
「あれそうだったの? いつもと変わらないから気付かなかったよ」
そう言って和巳は一人で笑っている。
少しだけ不機嫌になった美利の髪の毛を手櫛で梳かす和巳は、
「ごめん。
でもな、くーはくーで居ていいんだ」
と、目線を合わせて呟いた。
何とも言えない表情をする美利。
三人は美利に気を使ってくれている。
そしてその三人の前でくらいは自分を出してもいいのはわかっている。
しかしそれも出来ない自分に嫌気がさしているのだ。
こうして無理に笑っている時は特に、『僕は一人で生きていけないんだ』ど痛感させられるのだ。
美利はもう一度和巳の胸に頭をうずめる。
ぽんぽんと頭に置かれる手が心地よかった。