「先月の終わりに働いていた会社を辞めて、荷造りも済ませて、後は明日の朝に新幹線に乗って故郷へ…と言う訳で」

「おばさん思いなんですね」

そう言った彼に、
「そう見えますかね?」

私は言い返した。

「すごいなと思いました」

「ありがとうございます」

彼はじっと、私の顔を見つめてきた。

「あの、何か?」

何か顔についているのだろうか?

「好きになってしまいそうだなと」

そう返事をした彼に、
「えっ…!?」

私は驚いた。

「すみません、忘れてください、悪ふざけが過ぎました」

彼は慌てたように返事をすると、ビールを口に含んだ。

そんな彼の様子に、
「私も、同じことを思っていました…」
と、呟くように言った。