「もっと警戒しないと駄目でしょ?水樹ちゃん目立つんだから。だけど結構言い返してたからびっくりしたよ。」

「生まれて初めてナンパされた。だからわからなくて・・・ごめんなさい・・・。あ、でも絡まれたら闘うって日頃から心掛けているから頑張ったんだよ。」

「へ? ま、何も無くてほんとによかったあ。羽柴大活躍!ね、喉乾いたね、ソフトクリームやめてさ、飲み物買って駅まで歩いて帰ろうか。」

「うんっ。あれ?ソフトクリームどうしたの?でもありがとう探しに来てくれて。それにしても瞬ちゃん空手できるんだね。凄く強そうだったよ。」

「いや、まあ、それは、あはは・・・。でもまたチビッて言われちゃったよームカつくっ。あいつ、アスファルトの継ぎ目にでもつまづいて転べばいいのにっ。」

「あはは地味だね。でもほんとだね。」

そう笑った後、水樹は瞬介を凝視した。

「でも・・・。」

え、何?と瞬介は身構えた。

「でも瞬ちゃんチビじゃないよ。ほらっ。」

そして水樹は瞬介と並んでみせた。

「なっ、やっ・・・。」

あれ?もしかして・・・。と、瞬介はドキドキした。

そして晩御飯も一緒に食べたい所だけど、明日もまだ夏休み前の残りの学校があるので帰る事にした。電車に乗りながら、勇利についても話をした。勇利は本命の受験の日が地方大会の2日前で、なかなか練習に来れない事と、ついでに来年受験する瞬介の本命大学が毎年8月の中旬が受験の日だという事を水樹は知った。

そしてクラブに関しては、勇利もこんな状態であるし、今年全国大会に出場するのは希望薄だと二人は思った。だからこそ瞬介は胸に秘める。来年必ず、自分が全国大会に連れて行ってあげたい。

「ただいま・・・。」

そして瞬介は帰宅すると壁まで真っ先に身長を比べに行った。

「お姉ちゃん、ちょっと来てっ。ねえ、どう、どう?」

「あ!ほんとだ。この印より1cmは超えてるよ!凄いじゃん、瞬!」

戸惑う。どうしよう。水樹をとうとう追い越してしまった。瞬介は追い越す事に精一杯で、正直その後の事は真剣に考えてはいなかったのだ。

勇気がない。うん。大丈夫。ここで決められない男はどこでもかっこよくいられないんだ。俺、変わりたい。だからこの夏のハンドがオフになったらもう一度誘いに行くよ。今度は友達としてではなくて。

瞬介は顔を上げた。