日曜日。
大型のハンドボール専門店に行く為に瞬介は電車に乗って約束した駅に向かった。瞬介は待ち合わせより早めに着く性質で、でもそれなのに、改札を出ればもう気付く。背の高い女の子が姿勢よく立ちながらキョロキョロと何かを探していた。

探しているのは・・・。
瞬介は嬉しい。探されているのは自分に間違いない。そして今日の待ち合わせは特別に初めの一声が恥ずかしかった。その上、もうお互いに存在に気が付いているのに、わざとらしく段々と近寄って行く寸劇が照れ臭い。でも照れ臭いと言いつつもその数秒を満喫してもいるのだった。

「水樹ちゃん早いね。」

「瞬ちゃんだってまだ時間に余裕あるよ。」

「行こっか。」

「うん。二人きりってほぼないから珍しい光景だね。」

「そうかな・・・。」

本当は他にもう一人加わり3人で行く予定だったのだけれど、急遽来れなくなってこうなった。

瞬介は水樹を15歳から知っている。今二人は大学の1回生に当たる年齢で、瞬介は自分で言うのもなんだけれども年をとったと感慨深かった。そして学校外で見る水樹は余計に特別大人っぽく見えた。

しばらく歩いて店に入ると、一般的なスポーツ店にはない品揃えで興奮した。そして喋りながら店内を探索し、最後はシューズを選んだ。履いて馴染ませておかないと、すぐには使えないから早めに購入するのだ。

「瞬ちゃんて足大きいんだね。私と随分差があって驚いた。もしかしてまだまだ背が伸びるのかもしれないね。」

「羽柴家チビだしもう無理かなー。最近やっとやっと水樹ちゃんに追いついてきた所だもん。あー、俺も礼みたいに高身長を手に入れてイケメンに昇格しないかなー。」

「あはは。イケメンて背が高いんだ。知らなかった。人にはそれぞれ合う高さがあって、バランスとか、だから瞬ちゃんは今の高さが一番似合ってると思うけどなあ。でもそれが男心なんだったら、私もちゃんと伸びるの応援しないといけないねっ。」

「じゃあ応援団長よろしくお願いします!」

水樹は笑った。その笑顔を独り占めしている瞬介は、二人きりだともっと緊張するのかと思っていたけど、思いの外リラックスできていて凄く楽しかった。