「ん……」


薄紅色の形の良い唇から漏れる、月子の吐息。

重ね合う時間が密になればなるほど、激しく求めるように敦が奥へと入り込んでくる。

訳も分からずわけいられた唇は、息を吸う隙間もなく、すべてが敦に支配されていた。

身を捩る月子を押さえつけたまま、敦は更に月子の中へと滑り込んだ。


「あっ…く…ん、
……やだ…」

やっと見つけ出した隙間から、か細く声を漏らす月子。

それを見逃さないように唇で含めとると、敦は一息に月子の歯茎の裏まで、なめしだいた。

「ひゃっ…」


味わったことない感触に、全身が反応する。

先程の疼きとはまた違う、体のもっと奥の……


漏れた声と同時に、月子は敦を強く突き飛ばした。

「ーーっ!」

押されたひょうしに周りの机にぶつかり、ガタガタと音を立てて敦の体制が崩れる。

距離を取るように少し後退った月子は、自分の肩を抱きながら小さく震えたのだった。


そんな姿の月子を見やり、敦は変わらない口調で淡々と告げた。



「ごめんね、月子…
でも、どうしてもこうしたかったんだ。」





何を感じたんだろうか…


敦とのキスの間、
その唇を伝って零れ落ちてきた感情は、とても複雑なものだった。

欲望よりももっと深い、執着心のような感情。

憎悪にも似た何かが、敦に宿っていたように感じる。



月子は視線を下げたまま、敦に小さく頷いた。

「麻美ちゃんの所へ、
行こう……」