回り込んだ麻美が目にしたもの……
身長程の大きさの鏡が、麻美を待っていたかのように静かに姿を現したのだった。
それは、縁の無いどこにでもあるような平凡な鏡。
埃がかぶった鏡の下方には、小さく「15期卒業生寄贈」と書かれている。
麻美はその場にしゃがみ込むと、よく見えるようにスッとその文字を指でなぞった。
時間帯のせいか、鏡に映り込んだ光の帯が一段と眩しく見える。
フワリと舞った埃をよけながら、麻美はその鏡を覗き込んだ。
♪、♪、♪、♪……
覗き込むと同時に、手に持っていた携帯からバイブの振動と小気味いい音が流れだした。
「きゃっ!」
思いがけない着信音。
驚いたひょうしに付いた埃を軽くはたき、麻美は躍る心臓を無理やり押さえた。
ディスプレイには、馴染みの名前。
小さく「眞鍋 隆之」と、その文字が浮かび上がっている。
その名前を目にした麻美はフゥと小さく息を吐くと、携帯に耳を添え隆之の名を呼んだ。
「もう…あにきってば、
ビックリさせないでよ……」
『…あさ‥み?
…りぃ…、どう…た…‥?』
プツプツと音を立てる、麻美の携帯。
電波が悪いのか、うまく隆之の言葉が伝わらない。
もどかしげに麻美は続けた。
「あにき、ちょっと待って……」
すぐに傍にあった窓を開けると、麻美はそこから顔を出した。
スッと、心地よい風が頬を撫でていく。
こもっていた嫌な空気を入れ替えるように大きく一息吸い込み、麻美は言葉を繋げた。
「ううん、何でもない。
あにき、
傍まで来てるの?」
隆之を思う安心感からか、話す声がワントーン高くなったのが自分でもわかる。
内心、ドキリと胸が高鳴った。
「いや、もう少しかかりそうなんだ。悪いな……
そっちは、変わりないか?」
身長程の大きさの鏡が、麻美を待っていたかのように静かに姿を現したのだった。
それは、縁の無いどこにでもあるような平凡な鏡。
埃がかぶった鏡の下方には、小さく「15期卒業生寄贈」と書かれている。
麻美はその場にしゃがみ込むと、よく見えるようにスッとその文字を指でなぞった。
時間帯のせいか、鏡に映り込んだ光の帯が一段と眩しく見える。
フワリと舞った埃をよけながら、麻美はその鏡を覗き込んだ。
♪、♪、♪、♪……
覗き込むと同時に、手に持っていた携帯からバイブの振動と小気味いい音が流れだした。
「きゃっ!」
思いがけない着信音。
驚いたひょうしに付いた埃を軽くはたき、麻美は躍る心臓を無理やり押さえた。
ディスプレイには、馴染みの名前。
小さく「眞鍋 隆之」と、その文字が浮かび上がっている。
その名前を目にした麻美はフゥと小さく息を吐くと、携帯に耳を添え隆之の名を呼んだ。
「もう…あにきってば、
ビックリさせないでよ……」
『…あさ‥み?
…りぃ…、どう…た…‥?』
プツプツと音を立てる、麻美の携帯。
電波が悪いのか、うまく隆之の言葉が伝わらない。
もどかしげに麻美は続けた。
「あにき、ちょっと待って……」
すぐに傍にあった窓を開けると、麻美はそこから顔を出した。
スッと、心地よい風が頬を撫でていく。
こもっていた嫌な空気を入れ替えるように大きく一息吸い込み、麻美は言葉を繋げた。
「ううん、何でもない。
あにき、
傍まで来てるの?」
隆之を思う安心感からか、話す声がワントーン高くなったのが自分でもわかる。
内心、ドキリと胸が高鳴った。
「いや、もう少しかかりそうなんだ。悪いな……
そっちは、変わりないか?」