「ねぇ、ようちゃん…
やっぱりやめようよ。
先生もこの遊びはしちゃいけないって、終わりの会で言ってたよ……」


夕焼け空の赤色が、だんだんと濃くなり始めた誰もいない教室。

廊下にさげられた3年2組のプレートが、頼りなげにふらふらと揺れている。



ひとつの小さな机に、向かいあって座ったふたりの女の子。

まるで合わせ鏡を見ているかのように、同じふたつの顔がお互いを見つめている。


そのふたりの間。

「あ」から始まる文字達がびっしりと書かれた白い紙と、小さいえんぴつ。

少しおびえてそう言う月子の顔に一瞬強く視線を向けたかと思うと、陽子は表情を緩めてにっこりと微笑んだ。


「だいじょうぶ。
ただ、あっくんの好きな子の名前聞くだけじゃない。
ほんとにつきちゃんは、心配症なんだからぁ。」