「ああ。俺の父さん仕事人間で顔合わせるたびに俺と母さんに仕事の話ばっかしてたからさ。そのせいで団らんの時間なんて本当に一切なかったし、息苦しかったんだと思う」

 作り笑いをして、零次は言う。

「でもそれだけで、子供をおいて自殺するか?」
 毎日愚痴言われるのは確かに嫌だし大変だと思うが、いくら何でも子供をおいて自殺するほどだろうか? 

「すんじゃねぇの? 子供に虐待するくらいひでぇ親もいれば、子供おいて自殺するくらいひでぇ親もいるだろ」
 自殺したのには他にも深いわけがありそうな気がしなくもなかったが、俺は零次のその言葉を聞いて深く詮索するのはよそうと思い、ただ頷いた。

「じゃ、これ買うか!」
 紫色のソファの上に座って、零次は言う。
「うん!」
 零次と同じようにソファの上に座って、俺は頷いた。

 ――ん?

「零次、髪は紫色にしようと思わなかったのか?」
「ああ。この色の方が、チャラさが強調されるかと思ったから」
 零次の発言に俺は顔を顰める。
 聞かなければよかった。
「聞かなければよかったと思ってるだろ」
「だって、まさかそんな答えが返ってくると思わなかったから。女子に申し訳ないとか思わないのか?」
 眉間に皺を寄せて、呆れ顔で俺は言う。
「だってみんな了承してるし」
「本気で好きだけど、しょうがなく了承してる奴もいんじゃねぇの?」
「いねぇよ、そんな奴。もしいたら、即切る。愛なんてめんどくさいだけだし」
 返す言葉も見つからず、俺は押し黙る。

「ああもうやめようぜこんな話! 気分悪くなるし! 俺ちょっとソファの会計してくるわ! 海里はここで待っててー」
 黙った俺を見てから零次は頭をバツが悪そうにぐしゃぐしゃと掻いて、会計に行った。
 会計を終えると、俺と零次はホームセンターの二階にあったフードコートにたこ焼きを食べに行った。
 たこ焼きはねぎやてりたま、明太マヨなど通常のマヨネーズとソースのトッピングの他に、色々な味のトッピングがあった。

「海里どれ食う?」
「どれ選べばいいのかわかんない」
 全部食べたことないから味も見当つかないし。

「じゃあ甘いのと辛いのはどっちがいい?」
「甘いの」
「そしたらてりたまがいいんじゃないか?」
「てりたま?」
「そ。ソースがすごく甘いんだよ」
「じゃあそれにする」