阿古羅と一緒に学校に行くと、校門のそばに父さんがいた。俺はそれを見て慌てて阿古羅の腕を引いて、近くにあった建物の壁に隠れた。
今は昼だから、もしかしたら、朝からずっと俺が来るの待ってたのか?
これじゃあ学校に行けないな。
風呂に入ったりしてたから来るのが遅くなったけど、せめて午後の授業だけでも、参加しようと思ったのに。
「海里、どうした?」
阿古羅が不思議そうに首を傾げて、俺の顔を覗き込む。
「……校門に父さんいた」
「じゃあ、一週間くらい学校さぼって、俺と遊ぶか!」
「え?」
「一週間さぼれば、流石にあのクソ親も待ち伏せやめるだろ。お前を守るには、そうさせるのが一番有効かと思ったんだけど、違う?」
陽気に笑いながら、阿古羅は言う。
「……違くないと思う」
「じゃあ決まり! それじゃあ、私服に着替えて水族館でも行くか! それかホームセンターでも行くか? 布団かソファ買いに」
「水族館……?」
小声で呟く。
そんなの虐待される前に家族で行ったの以来だ。
「あ、もしかして嫌い?」
「いや、そんなことない」
「ククク。じゃあ水族館に行くか、ホームセンターは明日にして」
阿古羅は楽しそうに喉を鳴らして笑った。
俺が否定したのがそんなに面白かったのか?
「わ、笑うなよ」
「なんで? いーじゃん。俺は嬉しいよ乗り気なお前が見れて」
阿古羅が心の底から嬉しそうに笑う。
「別に乗り気なわけじゃ……」
「いや乗り気だろ即答したし! 素直になれよ!」
「うるさい」
阿古羅を睨みつける。
「悪い悪い。からかいすぎたな。お前がテンション上がってることってなかなかないから、嬉しくてさ」
バツが悪そうに頭を掻きながら、阿古羅は笑った。
「……阿古羅」
「楽しもうぜ、海里!」
ますます楽しそうに笑って、阿古羅は言う。
「うん」
俺はそれに、少しだけ笑って頷いた。作り笑いをしないで、ちゃんと笑った。
「あ、そうだ。奈々ちゃん達誘うか?」
「いや、いい」
「なんで?」
俺の言葉に阿古羅は目を丸くする。
「……阿古羅が俺の人生を変えるって言ったから」
「りょーかい。ツンデレだな、海里は」
ウィンクをして、阿古羅は冗談めかす。
「ツンデレじゃない」
「ツンデレだろ。俺の名前滅多に呼ばないし」
口を尖らせて否定した俺をじっと見つめて、阿古羅は言う。