今日は大怪我だけで済んだけど、明日の朝はいよいよ殺されるんじゃないか? ならばいっそここから逃げてしまおうか。それで自殺でもするか?
さっきみたいに死因を事故に偽装されるのはナシだ。だってそんなことになったら、俺が死んだ後、父さんが良い想いをすることになるから。それなら自殺が一番いい死に方なんじゃないか?
――おい、死にたくないんじゃなかったのか。
「ハッ」
笑える。
……散々死にたくないって思っていたくせに。
自分の生きたいって意志を殺そうと思っても殺せなかったくせに。
阿古羅に、それをもの凄い簡単に見破られたくせに。それなのに、あんな風になす術もなく痛めつけられただけで、俺は自殺を考えるのか。
……弱いな。まるでゴミみたいに弱い。
でも、しょうがないのかもしれない。
こんな地獄で生きてたら、弱くなって当然だ。
じゃあ、本当に自殺してみるか? こんな世界で生きてても、少しも楽しくないし。
手に持っていたスマフォが、不意に通知音を立てた。
スマフォを見ると、ラインがきていた。
奈緒と美和と阿古羅と俺のグループから連絡が来ている。どうやら、奈緒がプリの写真を送ってくれたらしい。
俺はラインを開いて、送られてきたプリの写真を見た。写真の下の方に、ピンクのハートの中に日付がかかれたスタンプがある。阿古羅にラクガキのやり方を教わって、奈緒と一緒に選んだスタンプ。
「……楽しかったな」
涙が頬を伝う。
もっともっと、四人で遊びたかった。
でも、そんなのもう無理だよな。……こんな地獄、もう耐えられないし。
「あっ、猫」
プリに映っている俺の鞄が開いていて、そこから、猫のぬいぐるみが顔を出していた。
俺はソファのそばに置かれている猫のぬいぐるみを手に取って、触った。
これが無事だったのは不幸中の幸いだったな。
ゲーセンで阿古羅に言われたことを思い出す。
『お前は白って、どんな色だと思う?』
『えっと……綺麗な色? 純粋みたいな感じがする』
『確かに綺麗で純粋な色だ。でも俺は、悲しい色だとも思う。だって何色にも染まってないてことは、染まりたいって意志がないってことだろ。お前はもう二度とそんな風になるな。もう二度と、自分の意志を殺すな。このぬいぐるみを見るたびに意志を殺したらダメなんだって自分に言い聞かせろ』
涙が頬を伝う。