女みたいな名前だね。
 そう言われるのを覚悟していたが、
 クリストファーは何も言わなかった。
「クリストファーどこにいるの?」という女性の声がして。
「行かなきゃ」と言って、クリストファーが去って行った。

 夢に現れた少女が、実は男の子だった。
 何という変なオチだろうとクリスは思った。

 クリスはショックを受けながら、とぼとぼと祖父の元へ戻った。
 どうしてこんなに気分が沈むのか、自分でもわからなかった。
 祖父は、家の前で気難しい顔をして立っていた。
 何かを考え込んでいるような素振りだった。

「おじいちゃん、ただいまー」
 クリスが言うと、祖父は「おかえり」と言った。
「誰か、来たの?」
 地面に、馬車の跡が残っていたので、来客かとクリスは考えた。

「アームストロング家の人間が挨拶に来たんじゃ」
 祖父はどこか哀しそうに言った。
「さっき、アームストロング家の男の子に会ったよ」
「そうか。セレ坊が会うのは久しぶりじゃな」
「僕、その子に昔会ってるの?」
「前に会っているはずじゃが、覚えてないのかの」
 クリスは考えてみたが、全く覚えていなかった。

「去年は来なかったが、あの家はバカンスで一年に一度、ここへ遊びに来てるんじゃ」
「そうなんだー」
「セレ坊と年が近いから、友達になれるといいな」
「うんっ。そうだね」
「確か男の子と女の子の2人と言っていたはずじゃ」
「男の子と女の子?」
「確か…そう言っていたような気がするが」
 祖父は考えるように言った。
 クリスは、もしかして。
 クリストファーのお姉さんか妹が、あの夢に出てくる人物じゃないかと胸をときめかせた。