人生の転機が訪れたのは7歳の誕生日であった。
 誕生日、当日。
 昼間は友達を呼んで家でパーティーをした。
「セレーナちゃん、お誕生日おめでとう」
 友達がくれたプレゼントに「ありがとう」と言って、
 さっそくプレゼントの中身を見ると。
 人形やアクセサリーだった。
 クリスは「嬉しい」と言ったが、心の中ではうんざりとしていた。
 こんなもの欲しくなかった。

 夜になると、家族3人でささやかな誕生日会をした。
「セレーナ、開けてみて」
 母が嬉しそうに大きな包み紙を渡すので、
 クリスは「ありがとう」と言った。

 だいたい、プレゼントの予想はついていた。
 包装紙をはがして中身を広げると、
 やっぱりドレスが入っていた。
「セレーナの舞踏会デビューが楽しみね」
 母の一言に、クリスは震える。

 父は小さな箱をプレゼントしてくれた。
 開けてみると、水色に光った石が付いているネックレスだった。
 口をあんぐりと開けてクリスは父を見た。
 我が家は貧乏だと言っているくせに、
 宝石を買ってきたのかと思ったからだ。
「それは、宝石じゃないんだ」
 父は言った。
「ごめんな、セレーナ。でもな、宝石に負けないくらい綺麗だろ?」
「まあ、天然石?」
 母が言った。
 宝石と天然石の違いはよくわからなかったが、
 高価ではないものだと知って、クリスは安心した。
 だが、高価ではなくとも、興味はなかった。

「いつか大人になったら、素敵な男性に宝石を買ってもらいなさい」
 ふふふと母は笑った。
 クリスは口に出さなかったが、母のことを大嫌いだと思った。