結局、私の隣にはサクラ。
 サクラの隣にはクリスさんという位置になり。
 蘭の隣には、渚くんが寝っ転がり、
 シュロさんは一人で寝ることになった。

 シュロさんが何故危険なのかがわからなかったけど。
 もう、知りたくもないと思った。
 一日、渚くんの人生について聞かされて、
 あまりにもしんどいと思ったから・・・。

 なかなか眠れず、昼間の渚くんの会話を思い出しては恐怖でブルブルと震えた。
 皆、騎士団の学校出身で。
 厳しい訓練に耐えてきた仲間同士だった。
 そこで、お兄様とも知り合ったのだ。

 お兄様は一切、騎士団の学校について語っていなかった。
 教えてくれたのは、蘭についてだけだ。
 一体、どうして教えてくれなかったのだろうか。

 ようやく眠りについたのは、明け方くらいだったけど。
 怖い夢を見て、すぐに目を覚ました。
 内容は覚えていないけど怖い夢なのは確かだった。
 寝汗をかいている。
 顔をしかめて、起き上がる。

 部屋全体に、誰かのいびきが聞こえたので、誰かなと思うと。
 盛大にいびきをかいていたのは、シュロさんだった。
 グォォと地鳴りのようないびきに、「凄いな」と言ってしまった。
 そっと立ち上がって、静かに外へ出る。
 空気が澄んでいる。
 海が近いせいか、潮の匂いがした。
 ふと、蘭の大きな声がしたので、一体、何をわめいているんだろうと思った。
 声のするほうに歩いて行くと、
 海辺で一人、蘭が大声で独り言を言っているようだ。
「こっから5日くらいだ」とか「体調不良は想定外だ」とか、何をブツブツ言っているのだろう。
 見ているうちに、気味が悪くなってきたので戻ろうと思ったところ、
 凄い勢いで蘭がこっちを振り返った。

「早起きだな」

 蘭の碧い目が確実にこっちを捕らえている。
 逃げ出すわけにもいかず、蘭に近寄った。
「おはようございます」
「眠れたか?」
「…多少は」
 ハハハと笑うと、蘭はそうかと頷いた。
 何だか見てはいけないものを見てしまった気がして、
 非常に気まずい。
「…神殿で」
「へ?」
 海を眺めながら蘭が急に大声を出した。
「神殿で、祈祷する際の言葉を練習していたんだ」
「…そうなんですか」
 いや、絶対に違でしょ。
 しかも、何で言い訳のように言ってるんだろと思うとぞっとする。