良い匂いがするなと思って目を覚ますと。
暖炉の火が見える。
すっかりと辺りは暗くなっていて。
毛布をかけてもらっているのに気づいた。
まだグラグラと揺れているような感覚はするが、
吐き気はおさまったようだ。
「ご飯食べられそうですか?」
急に、シュロさんに声をかけられたのでビクリッと身体を震わせる。
シュロさんは、湯気がもくもくと出ているカップを差し出した。
「ありがとうございます」
カップを受け取ると、周りが静かなことに気づいた。
「あれ、蘭たちはどこ行ったんですか?」
小屋にいるのは、私とシュロさんだけのようだ。
「あいつらは、外で会議かな? 話し合ってます」
「シュロさんは、参加しなくていいんですか?」
質問したけど、シュロさんは答えずに暖炉のほうへと近づいて行った。
とりあえず、スープを食べてしまおうと思って。
一口、食べてみた。
玉ねぎとベーコンが入ったスープだった。
ゆっくりと食べている間、シュロさんは一言も喋らない。
「おいっ、もう寝るぞ」
バンッと乱暴にドアが開いたかと思えば。
蘭たちが中に入ってくる。
蘭と目が合うと、
「具合は良くなったのか?」
と大声で訊いてくる。
「あ、うん・・・」
頷く。
「俺はお前の横で寝る」
ふんっと鼻をならして、蘭が隣に座り込む。
「え…無理でしょ」
何言ってんだろうと思って、蘭の顔を見た。
昨日からずっとおかしい。
「夫婦なんだから、大丈夫だ」
「…そうじゃなくて、寝ている間に触れたりしたら…」
「カレンは僕と一緒に寝るんだ」
勢いよく抱き着いてきた渚くんにビクッと身体を震わせる。
「おめえはクリスと寝ろ」
怒った顔で蘭が言った。
「私、一人で寝れるから大丈夫だよ」
渚くんの頭をよしよしと撫でながら、言うと。
蘭と渚くんはお互いの顔を見合わせて、
「それは絶対に駄目」
「それは絶対に駄目だよ」
と、同時に言った。
「カレン、一人で寝るのは絶対に危険だよ」
慌てた様子で渚くんが言う。
「全員が同じ空間で寝るっていうのは色々あるんだよ」
蘭も慌てた様子で説明している。
渚くんは耳元で、
「シュロがヤバいの」
と小さい声で言った。
え? とチラリとシュロさんを見ると、
シュロさんは会話に興味なさそうにあくびをしている。
「じゃあ、私がカレンの隣に寝るわ」
とサクラが言う。
「てめー、今。男の身体だろうが」
蘭が怒って言った。
ぎゃーぎゃーと言い争う皆を見ながら。
ああ、疲れたなと思った。