もとは、ある島に住んでいた海の一族。
魚を取って平和に暮らしていた。
だが、他国の人間がその島に侵入し占領してしまった。
海の一族は土地を奪われ、世界中を旅しながら生活していたという。
安住の地を求めて、彼らは旅をした。
そして、渚の祖父の代の時に。
このティルレット王国にやってきて。
当時の国王と、ある約束をして土地を与えられた。
それから、海の一族はティルレット王国の海沿いで暮らし始めた。
漁業を生業として、暮らし始めた。
だが、安住の地を手に入れたとはいえ、一族としての生計は徐々に崩れつつあった。
海の一族として抜けるものだっていたし、
若い男達は、漁業の仕事を嫌がって都市部へ出稼ぎに行く者もいた。
渚の父の代には、海の一族は少数民族となり果てていた。
渚が幼少の頃、渚の父は「都市部へ行ったほうが稼げる」と言って出て行ってしまった。
渚の母は海の一族であることを誇りに思い、都市部には行かず集落に住み続けていた。
ここ10年ほど若い衆はすっかりと減ってしまい、
それと同時に恐れているのは純粋な海の一族を引く子供が皆、女だということだった。
渚はここ10年の中で生まれた唯一の男の子で。
黒い瞳を持った男の子だということだった。
「黒い瞳を持った男は、海の一族のリーダーとなる存在だ」
渚を見るたびに、集落で一番偉いオババが言った。
オババは80歳を超える集落で唯一の祈祷師だった。
次期、村長。
この海の一族の頂点となる存在。
生まれた時からずっと言われてきた渚。
それを当たり前だと思ってきた渚。
海の側で生まれ、9歳までずっと海と一緒に生きてきた渚。
物心ついたときには誰に教わることもなく泳げていたという。
ただ、9歳になった渚にとって。
ある程度の世間の様子を理解した頃。
何故、自分は海の一族で生まれた時からリーダーにならなければならないのかという疑問が生じた。
砂で家を作ってみたり、絵を描くのが好きだった渚にとって、
リーダーとは何かと考えるようになった。
「あんたは、偉くなるんだから、しっかりとしなさい」
いつしか、耳にタコが出来るくらい母親に言われる言葉。
「偉くなる」から何だっていうのだろう?
船に乗って魚を取るよりも、海岸で、ゆっくりと絵を描くほうが楽しい。
砂で何か造形物を作っているほうが尚、楽しい。
やかましく言ってくる母の存在にうんざりした渚は、よくオババの家に泊まりに行ったものだ。
魚を取って平和に暮らしていた。
だが、他国の人間がその島に侵入し占領してしまった。
海の一族は土地を奪われ、世界中を旅しながら生活していたという。
安住の地を求めて、彼らは旅をした。
そして、渚の祖父の代の時に。
このティルレット王国にやってきて。
当時の国王と、ある約束をして土地を与えられた。
それから、海の一族はティルレット王国の海沿いで暮らし始めた。
漁業を生業として、暮らし始めた。
だが、安住の地を手に入れたとはいえ、一族としての生計は徐々に崩れつつあった。
海の一族として抜けるものだっていたし、
若い男達は、漁業の仕事を嫌がって都市部へ出稼ぎに行く者もいた。
渚の父の代には、海の一族は少数民族となり果てていた。
渚が幼少の頃、渚の父は「都市部へ行ったほうが稼げる」と言って出て行ってしまった。
渚の母は海の一族であることを誇りに思い、都市部には行かず集落に住み続けていた。
ここ10年ほど若い衆はすっかりと減ってしまい、
それと同時に恐れているのは純粋な海の一族を引く子供が皆、女だということだった。
渚はここ10年の中で生まれた唯一の男の子で。
黒い瞳を持った男の子だということだった。
「黒い瞳を持った男は、海の一族のリーダーとなる存在だ」
渚を見るたびに、集落で一番偉いオババが言った。
オババは80歳を超える集落で唯一の祈祷師だった。
次期、村長。
この海の一族の頂点となる存在。
生まれた時からずっと言われてきた渚。
それを当たり前だと思ってきた渚。
海の側で生まれ、9歳までずっと海と一緒に生きてきた渚。
物心ついたときには誰に教わることもなく泳げていたという。
ただ、9歳になった渚にとって。
ある程度の世間の様子を理解した頃。
何故、自分は海の一族で生まれた時からリーダーにならなければならないのかという疑問が生じた。
砂で家を作ってみたり、絵を描くのが好きだった渚にとって、
リーダーとは何かと考えるようになった。
「あんたは、偉くなるんだから、しっかりとしなさい」
いつしか、耳にタコが出来るくらい母親に言われる言葉。
「偉くなる」から何だっていうのだろう?
船に乗って魚を取るよりも、海岸で、ゆっくりと絵を描くほうが楽しい。
砂で何か造形物を作っているほうが尚、楽しい。
やかましく言ってくる母の存在にうんざりした渚は、よくオババの家に泊まりに行ったものだ。