太陽はすっかりと昇って、辺りは明るく穏やかな空気…に思えた。
 湖の風は爽やかに流れていく。
 甲板部分で、大の字になって寝ているシュロさんを見て信じられないと思いながらも。
 私は湖に向かって「うぇぇ」と情けない声を出して嘔吐してしまった。

「乗って10分も経ってないぞ」
 後ろで、信じられないと言わんばかりに蘭が言った。
「…皆さんと違って初めて乗るもんですから」
 ダラダラと額から脂汗が流れる。
 もう船を降りたいと思う。
 何で、みんな平然として乗ってるのか理解が出来ない。
「中に入って休むしかないわよ、こればっかりは」
 そう言って、サクラが私の腕をつかむと引きずっていく。
 ドアを開けると、目の前にあるのは操縦席らしきものと渚くんだ。
「あれ、サクラさんどうしたの?」
「どうもこうもないわよ、カレンったら船酔いしちゃってんだから」
 男の声で女性口調で話すサクラに違和感を感じながらも。
 されるがまま、私はサクラに引っ張られて操縦席の後ろにある長い椅子のような…なんだかよくわからないスペースに横たわった。
「ここで、横になるしかないわ。吐きそうになったら、ここにバケツ置いておくから」
 それだけ言うと、サクラはさっさと出て行ってしまった。

「なんか、サクラ冷たくない?」
 ドアのほうに向かって手を伸ばしたけど。
 動くことが出来なかった。