カレンを誘拐する計画は、国王の遺言に沿った内容の一つ。
 サクラは牢屋に入ったが、ライトはすぐに解放された。
 ローズの前で跪くライトを見て、自分は国王に試されていたのかと冷ややかな目で見た。
「家臣たちにも素性を隠して、国王の言う通りだけを聞く人間がいるとはねえ」
「流石、ローズ様でございます」
「どこまでが本当? 医者っていうのは嘘って言ったらこの場で殺すからな」
 ローズが冷たく言い放つが、ライトは顔色一つ変えなかった。
「わたくしは代々、医者の家系でございます。わたくし自身、医者であることに嘘はありません」
「あ、そっ。じゃあ安心だ」
 自分自身、呪いのせいで何人もの医者にかかったが、結果としてはどうしようもできなかった。もし、蘭の主治医だというのに医者としての能力がないのならば、それは本当に裏切りだとローズは感じた。
「国王が、俺と蘭が協力して何かをやり遂げる為に誘拐したってところだろ?」
「それは、お答えできません」
 毅然と答えるライトに、この男は忠実な国王の犬なのだなと感心した。

 将来のことを考えて、国王はあれこれと準備を進めていた。
 まず、手始めに誘拐事件を起こすとは…。
「ただ、ぬるいなあ…」
 ワクワクしたわりには、あっさりと解決してしまうのだから面白くない。
 これは、俺にではなく蘭に対する課題なのだろうか?

 ローズはじっとライトを眺めるのであった。