考えてみると、国王は自分の母親だけを正式な妻として選んだ。
王族だけは一夫多妻制が許され、自分は身体が弱かったし弟も死んでしまったというのに。国王は側室を迎えなかった。
よそで蘭の母親と結ばれていたことを、汚らしいとは思わない。
母が生きていたら、きっと憤慨してライバル視していたのだろうなあというのは想像出来るが…
弟がいきなり死んでしまい、母も亡くなってしまい、そして年老いた父親の命も終わろうとしている…その時、本当に蘭が存在してくれてどんなに良かったことだろうか。
蘭とは、挨拶をする程度でまともに話したことがなかった。
それを踏まえて、もしかすると国王は弟と話す機会を与えてくれたのだろうかとローズは考えた。
蘭はあの紫の目の男の妹と結婚し、屋敷で暮らすようになった。面白いのは選ばれし者たちとも一緒に暮らすということだった。
姿を隠しながら彼らを観察しつつ、蘭を護衛していた。
蘭は結婚したというのに、屋敷ではあまり過ごさず。学校へ行ったり騎士団としてのトレーニングを受けたり、国王の弟して補佐するための仕事を学んでいた。
この男の体力には正直、ドン引きするぐらいだとローズは思った。ほとんど睡眠時間を取らずに頑張るこの男の原動力はどこから来ているのだろうか。
そのうち、カレンという妻に興味を持ち始めた。だが、蘭に「絶対に近づくな!」と釘を刺された。人間、近寄るなと言われたら近寄りたくなるのが心情である。
ティルレット王国では珍しく、日中に雨が降った日のことだった。
カレンは驚きながらも、ずぶ濡れになったローズを招き入れ、タオルと着替えを用意してくれた。
顔に痣があるそうだが、ローズの目からは、はっきりとわからなかった。もっと近くで見ればわかるかもしれないと思いサングラスを取ってカレンに膝枕をしてもらった。
近寄って顔をよく見たが、やはり痣はわからずじまいだった。だから、わざと痣のことを訊いてやった。そうするとカレンは泣きそうな顔をした。ローズは、なんて愉快なのだろうと思った。
もっと、ゆっくりと話したかったが蘭に見つかってしまった。
カレンが退出した後、蘭はじっとローズを睨みつけた。
「カレンに手、出してないだろうな?」
「どうだろうね」
両手を揚げると、蘭が怖い顔でこっちを見ている。
彼女に触れたくても触れられないイライラがマックスのようだ。
「冗談だよ。あんな女は好みじゃない」
本当は「あんな不細工…」とも言ってやろうと思ったが。
これ以上、蘭を怒らせてはまずいと考えた。
「彼女のどこに惹かれてるんだ?」
話をそらそうと、蘭に質問すると、
蘭はうつむいて表情を変えた。
普段はポーカーフェイスで通している蘭がはっきりと恥ずかしがっているのを見て「可愛い奴だ」と言いそうになった。
「…初恋の人なんだ」
「あん?」
ハツコイという何とも可愛らしい言葉に微笑ましいと思ってしまったが、
蘭は大量の汗をかきはじめて、
「この話はおしまい!」
と大声を出した。
王族だけは一夫多妻制が許され、自分は身体が弱かったし弟も死んでしまったというのに。国王は側室を迎えなかった。
よそで蘭の母親と結ばれていたことを、汚らしいとは思わない。
母が生きていたら、きっと憤慨してライバル視していたのだろうなあというのは想像出来るが…
弟がいきなり死んでしまい、母も亡くなってしまい、そして年老いた父親の命も終わろうとしている…その時、本当に蘭が存在してくれてどんなに良かったことだろうか。
蘭とは、挨拶をする程度でまともに話したことがなかった。
それを踏まえて、もしかすると国王は弟と話す機会を与えてくれたのだろうかとローズは考えた。
蘭はあの紫の目の男の妹と結婚し、屋敷で暮らすようになった。面白いのは選ばれし者たちとも一緒に暮らすということだった。
姿を隠しながら彼らを観察しつつ、蘭を護衛していた。
蘭は結婚したというのに、屋敷ではあまり過ごさず。学校へ行ったり騎士団としてのトレーニングを受けたり、国王の弟して補佐するための仕事を学んでいた。
この男の体力には正直、ドン引きするぐらいだとローズは思った。ほとんど睡眠時間を取らずに頑張るこの男の原動力はどこから来ているのだろうか。
そのうち、カレンという妻に興味を持ち始めた。だが、蘭に「絶対に近づくな!」と釘を刺された。人間、近寄るなと言われたら近寄りたくなるのが心情である。
ティルレット王国では珍しく、日中に雨が降った日のことだった。
カレンは驚きながらも、ずぶ濡れになったローズを招き入れ、タオルと着替えを用意してくれた。
顔に痣があるそうだが、ローズの目からは、はっきりとわからなかった。もっと近くで見ればわかるかもしれないと思いサングラスを取ってカレンに膝枕をしてもらった。
近寄って顔をよく見たが、やはり痣はわからずじまいだった。だから、わざと痣のことを訊いてやった。そうするとカレンは泣きそうな顔をした。ローズは、なんて愉快なのだろうと思った。
もっと、ゆっくりと話したかったが蘭に見つかってしまった。
カレンが退出した後、蘭はじっとローズを睨みつけた。
「カレンに手、出してないだろうな?」
「どうだろうね」
両手を揚げると、蘭が怖い顔でこっちを見ている。
彼女に触れたくても触れられないイライラがマックスのようだ。
「冗談だよ。あんな女は好みじゃない」
本当は「あんな不細工…」とも言ってやろうと思ったが。
これ以上、蘭を怒らせてはまずいと考えた。
「彼女のどこに惹かれてるんだ?」
話をそらそうと、蘭に質問すると、
蘭はうつむいて表情を変えた。
普段はポーカーフェイスで通している蘭がはっきりと恥ずかしがっているのを見て「可愛い奴だ」と言いそうになった。
「…初恋の人なんだ」
「あん?」
ハツコイという何とも可愛らしい言葉に微笑ましいと思ってしまったが、
蘭は大量の汗をかきはじめて、
「この話はおしまい!」
と大声を出した。