アズマの妹であるカレンは両親から一切、愛情を受けることはなかった。
 生まれてすぐに顔に痣があるのを見た母親は娘を拒絶した。
 父親は「世間体がある」と言って、娘を養子に出すことも捨てることも選ばなかった。
 敷地内に離れを作り、娘一人をそこで育てることにした。
 人を雇い、子育ては全て人任せだった。

 生活は苦しく、アズマが親戚の家で働くことで何とかギリギリの状態を保っていたが、それでも両親は満足出来なかった。
 父親は、カレンに一日に何回か散歩することを進めた。
 カレンが敷地内を散歩する姿を親戚に見せつけていたのだ。
「あの子がフェイスベールを取って元気に外に出歩くためには治療費が必要だ」
 そう言って、親戚や貴族たちから同情を貰う形で金品を得ていた。

 それを聞いていたローズは可笑しくて仕方なかった。
 そんな女と結婚するなんて、物好きな奴だとしか思えなかった。
「こっちとしては、あの男の妹が身近なところに居てもらえて便利だな」
 嘲笑うローズを見て、臣下たちは凍り付いた。