心の拠り所なんて、最初から作ってはいけなかったのだ。
 ローズは、笑った。
 今までは、愚痴をこぼせば大人に殴られた。
 誰一人自分を心配してくれなかった。
「疲れた」
 と愚痴をこぼしても、親身になって話を聴いてくれるシュロにどれだけ救われたことか…。

 青年騎士団学校にはロクに通ってはいなかったが。
 ローズにとって、シュロと過ごした日々は良い思い出になっていた。


「今回の相手は、難しいかもしれないな」


 国王が紙切れを渡す。
 その紙切れに書かれた人物を殺害するのが、ローズの仕事だ。
 折り畳まれた紙切れを開くと、「蘭」と書かれていたので、ローズは流石に驚いた。
「…弟を殺せと?」
「殺すのではない、痛めつける程度で良い」
 国王が一体、何を考えているのかローズには理解が出来なかった。