女神が住む神殿のある島を管理するのは、海の一族だった。
 海の一族は、先代の国王と約束を交わした。
 この国に住む代わりに、神殿のある島を守ってほしいと。
 だが、海の一族が勝手に島に入ることは禁止されていた。
 時代ごとに、王子が王位を継承する際、案内人として海の一族が島を案内するという名目だった。

 神殿のある島には、財宝が眠っている。
 海の一族の間で、そんな噂が流れた。
 禁止されているが、あの神殿を勝手に調査しに行った者が財宝を見たのだという。
 金に目のくらんだ若者たちは、財宝を盗んでしまおうと企んだ。
 その若者たちの中に、渚の父親がいた。

 ローズが、国王から海の一族である女性3名を殺せと言われたのは13歳の時だった。
 暗殺するのかとばかり思っていたら、「公開処刑だ」と言われた。
 公開処刑をするのは生まれて初めてだったし、実際のところローズは処刑の時、手をくだしてはいない。

 国王に言われたのは、「選ばれし者」の一人である少年を捕まえて、少年の目の前で。彼の家族が一人一人、首が吹っ飛ぶのを見届けるという役割だった。
 国王が騎士団の前に現れるのは初めてではないかとローズは思った。
 何故、このように大勢の人の前でこのようなことをするのだろうとローズは考えた。
 だが、考えたところで自分にはよくわからないと思い直した。