食堂で喋っていると。
 扉がバンッと乱暴に開いて、
 蘭とクリスさんが入ってきた。

「全員揃ったか?」

 蘭は周囲を見渡すと。
 手に持っていた古い紙をテーブルに叩きつけるように置いた。

「カレンだけには、説明してないから。もう一度説明する」
 蘭の大声に、うるさいなあと思いながらも。
 蘭を見た。
「明日から、我が家に代々伝わる儀式を遂行しに行く」
「儀式?」
 ナニソレとサクラや渚くんを見たけど。
 2人とも怖い顔をしていた。
「コレだ」
 蘭が古い紙を指さしたので、覗いて見ると。
 紙には地図が書かれてあった。
 地図はざっくりと書かれてあって。
 ティルレット王国の海側部分と、小さな島が一つだけちょこんと書かれてあって。
 小さな島の部分にバツ印が書かれてある。

「跡継ぎは、代々。この島の神殿へ行って祈りを捧げるという儀式があるんだ」
「それって、スペンサー家の?」
 蘭を見ると。
 蘭は無言で睨みつけてきたので、「いえ、なんでもありません」と謝った。

「とにかく、明日から俺達はこの島へ行く」
「俺達?」
 まさかと思っていると。
「ここにいる奴ら全員だ」
 自信満々に答える蘭に、「何で、私も?」と突っ込む。

「この神殿には、言い伝えがあって。人々の呪いを解くとも言われてんだ」
 ニヤリと蘭が笑った。
 だが、渚くんとサクラは顔色が悪く、
 クリスさんは苦笑していた。
 シュロさんは、マヌケな顔でぽかんと口を開けて聴いている。
「俺達にぴったりだろ?」
 勝手に話を進めていく蘭だけど。
 …私は別に魔法も呪いもかけられてないんだけどなあと思った。

 蘭と目が合うと、
「ついでに、願いが叶うとも言われている」
 そんな、おとぎ話のような話が存在するのだろうかと心から思った。