目の前にはお花畑が広がっている。
何度も見ている夢だ。
女の子と男の子がいて。
男の子は私を見て、
「気持ち悪いな」
と吐き捨てる。
私は大声で泣き叫んだ。
その光景を見ていて。
やっぱり、さっき見た花畑は夢で見ている光景とそっくりだった。
でも、幼い頃。
こんな何日も時間をかけて神殿まで行った覚えなんてない。
確か家から車に乗って行ったはずだから。
ここじゃないはずだ。
「カレン」
ふと、手を繋いでいることに気づいた。
見上げてみると、お兄様がいる。
「カレン、カレン」
何ですか、お兄様と言ったところで。
目を覚ます。
「……」
どこにいるのかわからなかった。
白い天井が見える。
ひんやりと冷たい床だった。
起き上がると、目の前に誰かがいるのに気づいた。
「カレン、起きた?」
ぼんやりとした視界が鮮明になって。
遠くに座っているのが、お兄様だと気づくと。
ああ、夢の続きかとわかって、思わずにやける。
ニコニコと笑うお兄様は石で出来た椅子に座っている。
ああ、やっと会えたんだと喜びに溢れた。
でも、お兄様を眺めているうちに、
これは夢じゃないと気づいた。
お兄様が大人の姿だったからだ。
夢の中に出てくるお兄様はずっと、子供だった。
「本物ですか?」
足が急にガクガクと震えだした。
そうだ、蘭と神殿を歩いていて。
行き止まりにになって。
いきなり床が抜けて落下して。
「私、死んだの?」
身体がブルブルと震えだす。
考えが追いついてこない。
ふと、さっきまで一緒にいたはずの蘭の姿がないことに気づいた。
「蘭は? 蘭っ!」
「そこにいるよ」
お兄様が視線を向けるほうを見ると。
柱に括り付けられている蘭の姿があった。
大きな柱に、ロープではなく植物の蔓がグルグルと蘭の胸部分に巻きついて柱に括り付けられている。
こっちを見つめる蘭の顔は真っ青だった。
「蘭っ、何で。どうして、何で、そんなことに」
パニックで何がなんだかわからなかった。
目の前にお兄様がいて、蘭は縛られて身動きが出来なくて…
こんなことどうやって予測出来たというのだろうか。
そもそも、今。身の回りに起きているのは現実なのだろうか。
それとも、夢の中か。
天国なのか、私は死んじゃったのか。
それすらも、もう…わからない。
「大丈夫。カレンは生きてる。君の旦那さんも生きてる。ちょっとの間、縛ってるだけだから」
「縛ってるって、お兄様がこんなことを?」
「カレン、落ち着いて。ちゃんと説明するから」
「何で、蘭を拘束するんですか?」
パニクッている私を見て。
はあ…とお兄様はため息をついた。
お兄様は最後に会った時よりも、大人びた姿だった。
白いシャツに白いズボン。白いネクタイをしているので背景に溶け込んでいる。
「カレンにはちゃんと、君の正体は話したの?」
ついこの間まで、蘭の護衛だったというのに。
お兄様はタメ口で蘭に語りかけている。
「…カレンは何も知らない」
青ざめた顔のまま蘭が言うと、
「そっか…。じゃあ、もう一人のお客を招いて説明するとしましょう」
お兄様が言うと。
後ろの扉が勝手に開いた。
ぴゅうっと強風が吹いたかと思うと。
全速力で誰かが突進してくる。
「死ね、アズマ!」
何度も見ている夢だ。
女の子と男の子がいて。
男の子は私を見て、
「気持ち悪いな」
と吐き捨てる。
私は大声で泣き叫んだ。
その光景を見ていて。
やっぱり、さっき見た花畑は夢で見ている光景とそっくりだった。
でも、幼い頃。
こんな何日も時間をかけて神殿まで行った覚えなんてない。
確か家から車に乗って行ったはずだから。
ここじゃないはずだ。
「カレン」
ふと、手を繋いでいることに気づいた。
見上げてみると、お兄様がいる。
「カレン、カレン」
何ですか、お兄様と言ったところで。
目を覚ます。
「……」
どこにいるのかわからなかった。
白い天井が見える。
ひんやりと冷たい床だった。
起き上がると、目の前に誰かがいるのに気づいた。
「カレン、起きた?」
ぼんやりとした視界が鮮明になって。
遠くに座っているのが、お兄様だと気づくと。
ああ、夢の続きかとわかって、思わずにやける。
ニコニコと笑うお兄様は石で出来た椅子に座っている。
ああ、やっと会えたんだと喜びに溢れた。
でも、お兄様を眺めているうちに、
これは夢じゃないと気づいた。
お兄様が大人の姿だったからだ。
夢の中に出てくるお兄様はずっと、子供だった。
「本物ですか?」
足が急にガクガクと震えだした。
そうだ、蘭と神殿を歩いていて。
行き止まりにになって。
いきなり床が抜けて落下して。
「私、死んだの?」
身体がブルブルと震えだす。
考えが追いついてこない。
ふと、さっきまで一緒にいたはずの蘭の姿がないことに気づいた。
「蘭は? 蘭っ!」
「そこにいるよ」
お兄様が視線を向けるほうを見ると。
柱に括り付けられている蘭の姿があった。
大きな柱に、ロープではなく植物の蔓がグルグルと蘭の胸部分に巻きついて柱に括り付けられている。
こっちを見つめる蘭の顔は真っ青だった。
「蘭っ、何で。どうして、何で、そんなことに」
パニックで何がなんだかわからなかった。
目の前にお兄様がいて、蘭は縛られて身動きが出来なくて…
こんなことどうやって予測出来たというのだろうか。
そもそも、今。身の回りに起きているのは現実なのだろうか。
それとも、夢の中か。
天国なのか、私は死んじゃったのか。
それすらも、もう…わからない。
「大丈夫。カレンは生きてる。君の旦那さんも生きてる。ちょっとの間、縛ってるだけだから」
「縛ってるって、お兄様がこんなことを?」
「カレン、落ち着いて。ちゃんと説明するから」
「何で、蘭を拘束するんですか?」
パニクッている私を見て。
はあ…とお兄様はため息をついた。
お兄様は最後に会った時よりも、大人びた姿だった。
白いシャツに白いズボン。白いネクタイをしているので背景に溶け込んでいる。
「カレンにはちゃんと、君の正体は話したの?」
ついこの間まで、蘭の護衛だったというのに。
お兄様はタメ口で蘭に語りかけている。
「…カレンは何も知らない」
青ざめた顔のまま蘭が言うと、
「そっか…。じゃあ、もう一人のお客を招いて説明するとしましょう」
お兄様が言うと。
後ろの扉が勝手に開いた。
ぴゅうっと強風が吹いたかと思うと。
全速力で誰かが突進してくる。
「死ね、アズマ!」