実家に住んでいた頃は、沢山の本を読んで暮らしていた。
 特に好きだった本は冒険ものだ。
 敵と戦う勇者に心から憧れたものだ。

 無数に蠢く死神を目の前にした私の脳裏は、冒険ものの小説がぐるぐると回っていた。
 勇者は敵と戦う。
 でも、それはあくま(・・・)でも小説の世界。

 今、自分が目にしているのは一体…。
「おりゃああああ」
 渚くんが死神の群れに突進していく。
 続いて、クリスさん。サクラ、シュロさん。
 どこから出したのかわからない剣を振り回しながら。
 みんなは死神と戦っている。
 あまりの怖さに身動きできないでいると、一人の死神がこっちへと突進してくる。
「ぎゃあー」
 叫ぶと、「おりゃあ」と蘭が死神を剣で切りつける。
「蘭、見かけによらず強いんだね」
 テンパって、失礼なことを言ったが、蘭は私の言った言葉をスルーして
「ぼーとするな」
 と大声で怒鳴った。

 死神を倒しても倒しても、神殿からぞろぞろと湧き出てくる。
 どうすればいいのかわからない。
「蘭、カレンちゃん。先に進んで」
 クリスさんの声に我に返る。
 クリスさんが長い脚で死神を蹴り飛ばす。
「どうせ、俺たちはこの先に進めることが出来ない」
「カレン。後は頼んだよー」
 渚くんが飛び跳ねたと思うと剣で次々と死神を切り付ける。
「行くぞ、カレン」
「いや、でもみんなが」
 躊躇すると、蘭がばっと私の手を掴んだ。
「えっ・・・」