小さい頃から、お花畑で遊ぶ夢をよく見ていた。
 場所はどこなのかはわからないが、
 蘭は女の子の姿で。
 近くには同い年くらいの見たことのない男の子が立っていた。
 そして、目の前には女の子が花の冠を作って遊んでいた。
 茶色に金髪が混じったぼんやりとした髪の毛の色に、
 近くで見ると紫色の目をした女の子だった。
 顔に何か塗料でも付けているのか、顔半分が薄い緑色だった。

「蘭様、こちらです」
 アズマに言われて蘭は我に返る。
 近くで見たアズマの妹は、黒いフェイスベールを身に着けていたので、目元しか見えない。だから、その分。紫色の瞳が酷く目立っているように思えた。

 アズマが用事だと言って、どこかに行ってしまい。
 蘭はアズマの妹と2人きりになった。
 だが、蘭が緊張して上手く会話が出来なかった。


「妹は、どうでしたか?」
 ふと、蘭が見渡すと、馬に乗って帰路についていた。
 いつのまにアズマの家から離れて、馬に乗ったのだろうか。
 蘭の記憶は飛んでいた。
 ゆっくりと、馬が進んで行く。
「兄弟は妹だけなのか?」
「そうです。私の本当の家族は、ある意味、妹だけです」
 アズマの言葉の意味がわからず、蘭は黙り込む。
 アズマの妹は、カレンと言った。
 あの子は決して美しい女の子ではないけど。
 何故か、惹きつけられるものがあった。
「また、遊びに行きましょうね。あの子は、家から出ることが許されないから」
 やはり、アズマの言うことが理解出来なかった。