蘭は、アズマと馬に乗って移動していた。
 何故、こうなったのだと蘭は考えようとするが、
 疲れ果てて何も考える気力がなかった。
 後ろで支えるように座っているアズマは、ゆっくりと馬を進めている。
「先に言っておきますが、私の妹は…その、見て驚かないでいただきたいのです」
「おまえの妹?」
 アズマは、こっそりと蘭を連れて実家に帰ろうとしていた。
 蘭をずっと屋敷に閉じ込めてしまっては駄目だと感じたからだ。
「私の妹は、蘭様と同い年で・・・その」
「はっきり言え」
 さっきから、言葉をつっかえながら言うアズマに蘭はイライラとした。
「顔に痣があるのです」
「アザって何だ?」
 チラリとアズマの顔を見ると。
 アズマは驚いた表情をした。
「痣というのは…、うーん。とても言葉が悪いのですが、妹の顔半分は薄い緑色なんです」
「それは病気なのか?」
 顔が半分緑色と言われても、蘭の頭には想像が出来なかった。
「生まれつきです。その痣のせいで、妹は一生外に出ることは許されないのです」
「何故だ? 顔が緑色だとどうして駄目なんだ?」
 蘭が質問したが、アズマは黙り込んだ。

 蘭の屋敷から一時間ほどでアズマの実家に到着した。
 だが、アズマは正門から入らずに横道に入っていく。
 馬から降りて、
 アズマは「ここからは木登りです」と言い出したので。
 蘭は意味がわからなかった。
 言われるがまま、木登りをすると、
 塀の向こう側が見える。
 椅子に座って読書を楽しむ少女の姿があった。
 すぐに、アズマの妹だということがわかった。
 アズマの妹を見て、すぐに目が離せなくなった。
 …夢に出てくる女の子と同じだったからだ。