翌朝、アズマの姿が見えなかったので。
 蘭はもしかして、アズマが辞めてしまったのではないかと慌てた。
 朝食の時に養父が、
「アズマは実家に帰っている。夕方には帰るそうだ」
 と教えてくれた。
 それを聴いた、蘭は更に腹が立った。
 アズマは何も悪くはないのだが、
 好きな時に家族に会いに行けるアズマが羨ましくもあり、不愉快な気持ちになった。
 身分が低いくせに、何を好き勝手に行動しているのか。
 護衛になった以上、主人である自分の言う通りに動いていればいいものを…。

 何もかもが楽しくなかった。
 毎日が無意味に感じた蘭は、どんどん痩せ細った。
 毎日、医者の診察を受けて。
 家の周りを散歩して・・・。
 弱っていく蘭を誰も助けられなかった。
「蘭様、わたくし明日。私用で出かけます」
 アズマの一言は、蘭の逆鱗に触れる。
「駄目だ」
 蘭が睨みつけると、アズマは戸惑い青ざめたかに見えた。
「何で、おまえだけ自由なんだ?」
 アズマは黙り込み、じっと蘭を見つめた。
「…では、こういたしましょう」