スペンサー夫妻の養子になってから、蘭は急激に痩せた。
母親と別れたショックが原因だから仕方ないと医者には言われたが、
いつまでも、部屋に籠って落ち込んでいる蘭をスペンサー伯爵は許さなかった。
ある日、蘭を庭に呼び出した。
蘭の目の前には14~20歳の男性が20人ほどが並んで立っていた。
「好きな人間を一人選びなさい。その人間を蘭の護衛係にしよう」
急に言われても、蘭はどうしていいのかわからずに黙っていた。
考えておきなさいと養父に言われたが、
考える気力もなかった蘭は庭をぶらぶらと歩いていた。
部屋に引き籠っていると、「外にでも遊びに行きなさい」と言われてしまうので、
仕方なく外を歩いているだけだ。
スペンサー家は、異常に広い敷地だ。
庭園の他に、騎士団用の訓練施設まであるという。
一体、どこまでがスペンサー家の敷地なのだろうと見渡しながら。
迷いたくないと思った蘭は立ち止まる。
自分は、どうしてここにいるのだろう?
「女みたいなガキをどうして、護衛しなきゃいけないのかねえ」
ふと、声がしたので、蘭は心臓が飛び跳ねるかと思った。
薔薇が咲き乱れる奥の方で寝っ転がっている2人の騎士団。
さっきスペンサー伯爵が、この中から選べと言っていた護衛候補のうちの2人だった。
「あんなに痩せ細ったガキを、どうして護衛しなきゃいけないんだよ」
「俺に言うなよ。団長に言えって」
「あー、面倒臭ぇ。息子ならともかく、赤の他人だろうが」
自分のことを言っているのだと気づくと。
蘭は泣きそうになった。
好きでこんなところに来たわけじゃないのに。
どうして、知らない人間に自分の悪口を言われなきゃいけないのだろう。
「大丈夫だよ。どうせ、君たちのような性格の腐っている人間は選ばれないだろうから」
颯爽と現れたのは、紫色の瞳の少年だった。
寝っ転がっている2人に対して、少年は真っ直ぐに言った。
「ここは、奥様のお気に入りの庭園だから寝っ転がるのはまずいと思うよ」
にっこりと微笑んで少年が言うと。
蘭の悪口を言っていた一人が「はああ?」と大声をあげて立ち上がった。
「何、優等生ぶってんだよ。没落貴族が!」
一人が少年を突き飛ばすと。
寝っ転がっていた2人は紫色の瞳の少年をボカボカと蹴り飛ばした。
「おまえに、プライドというのはないのか!」
「俺達に指図するな。貧乏人が」
蘭は、どうすることも出来ずオロオロと見守ることしか出来なかった。
何度も蹴りつける2人に対して、少年はやり返すこともなく黙って蹴られているだけだった。次第に、蹴りつけていた2人は「もういい」と言って去っていく。
目の前に倒れ込んでいる少年に。
蘭はそっと近寄った。
「何で、やり返さない?」
倒れていた少年は、蘭を見た。
紫色の瞳など、生まれて初めて見た。
珍しい瞳が自分を映し出すのが、変な感覚だと思った。
「やあやあ、これは蘭様」
倒れたまま、少年が言う。
少年はお腹をおさえて、ゴホゴホッと咳き込んだ。
「おまえ、弱すぎだろ」
蘭が呆れかえっていると、少年はヘラヘラと笑い出した。
「ごめんなさい。お見苦しい所をお見せして」
これが、アズマとの初めての出会いだった。
母親と別れたショックが原因だから仕方ないと医者には言われたが、
いつまでも、部屋に籠って落ち込んでいる蘭をスペンサー伯爵は許さなかった。
ある日、蘭を庭に呼び出した。
蘭の目の前には14~20歳の男性が20人ほどが並んで立っていた。
「好きな人間を一人選びなさい。その人間を蘭の護衛係にしよう」
急に言われても、蘭はどうしていいのかわからずに黙っていた。
考えておきなさいと養父に言われたが、
考える気力もなかった蘭は庭をぶらぶらと歩いていた。
部屋に引き籠っていると、「外にでも遊びに行きなさい」と言われてしまうので、
仕方なく外を歩いているだけだ。
スペンサー家は、異常に広い敷地だ。
庭園の他に、騎士団用の訓練施設まであるという。
一体、どこまでがスペンサー家の敷地なのだろうと見渡しながら。
迷いたくないと思った蘭は立ち止まる。
自分は、どうしてここにいるのだろう?
「女みたいなガキをどうして、護衛しなきゃいけないのかねえ」
ふと、声がしたので、蘭は心臓が飛び跳ねるかと思った。
薔薇が咲き乱れる奥の方で寝っ転がっている2人の騎士団。
さっきスペンサー伯爵が、この中から選べと言っていた護衛候補のうちの2人だった。
「あんなに痩せ細ったガキを、どうして護衛しなきゃいけないんだよ」
「俺に言うなよ。団長に言えって」
「あー、面倒臭ぇ。息子ならともかく、赤の他人だろうが」
自分のことを言っているのだと気づくと。
蘭は泣きそうになった。
好きでこんなところに来たわけじゃないのに。
どうして、知らない人間に自分の悪口を言われなきゃいけないのだろう。
「大丈夫だよ。どうせ、君たちのような性格の腐っている人間は選ばれないだろうから」
颯爽と現れたのは、紫色の瞳の少年だった。
寝っ転がっている2人に対して、少年は真っ直ぐに言った。
「ここは、奥様のお気に入りの庭園だから寝っ転がるのはまずいと思うよ」
にっこりと微笑んで少年が言うと。
蘭の悪口を言っていた一人が「はああ?」と大声をあげて立ち上がった。
「何、優等生ぶってんだよ。没落貴族が!」
一人が少年を突き飛ばすと。
寝っ転がっていた2人は紫色の瞳の少年をボカボカと蹴り飛ばした。
「おまえに、プライドというのはないのか!」
「俺達に指図するな。貧乏人が」
蘭は、どうすることも出来ずオロオロと見守ることしか出来なかった。
何度も蹴りつける2人に対して、少年はやり返すこともなく黙って蹴られているだけだった。次第に、蹴りつけていた2人は「もういい」と言って去っていく。
目の前に倒れ込んでいる少年に。
蘭はそっと近寄った。
「何で、やり返さない?」
倒れていた少年は、蘭を見た。
紫色の瞳など、生まれて初めて見た。
珍しい瞳が自分を映し出すのが、変な感覚だと思った。
「やあやあ、これは蘭様」
倒れたまま、少年が言う。
少年はお腹をおさえて、ゴホゴホッと咳き込んだ。
「おまえ、弱すぎだろ」
蘭が呆れかえっていると、少年はヘラヘラと笑い出した。
「ごめんなさい。お見苦しい所をお見せして」
これが、アズマとの初めての出会いだった。