ゆらゆらとオレンジ色の炎が燃えている。
サクラが気を利かせて、「夫婦の時間を与えてあげましょう」と言い出して。
私と蘭以外の人間はテントに引っ込んでしまった。
食事を終えて、頭がぼーとするけれども。
やっぱりシュロさんの不審な行動が気になって仕方ない。
「…おまえとサクラが2時間経っても出てこないから流石に心配になって様子を見に行ったんだ」
枝を炎の中に放り込んだ蘭が言う。
急に語りだした蘭に「うん」と頷くしか出来ない。
どんなに疲れていても、この男の美貌はどうして崩れないのだろう。
顔がむくんだりすることもなく、その横顔は常に美しい。
「流石に、全員で行くのは悪いから俺とシュロが様子を見に行ったんだ。そしたら、おまえが倒れてるから…」
「まさか…、見たの?」
あの時、オンセンにつかった状態で意識が遠のいたから100%、全裸だ。
蘭の言葉に、頭が痛くなった。
夫婦とはいえ、蘭に自分の身体を見られるとは…。
「いや。カレンは裸じゃなかった。サクラが真っ裸だったから、シュロがおまえも裸だと勝手に勘違いして現在に至るっていうワケだ」
「…ほんとに?」
「サクラがちゃんと急所をタオルで隠してたから、良かったな」
急所…という、なまなましい言葉に何言っているんだこの男は、と思う。
蘭と目が合った。
言っていることは真実なのだろう。
だけど、恥ずかしい気持ちで顔がみるみると熱くなっていく。
「明日になれば、どうせシュロは忘れちまう」
枝を折って、蘭はまた炎に放り込む。
その言い方が、少し投げやりな気がしたので、嫌な気持ちになった。
蘭が黙ったので、一気にその場が静かになる。
テントのほうからは声が聞こえない。
皆、寝てしまったのだろうか。
ぱちぱちと音のする炎から目が離せなくなる。
「皆の昔話は全部、聞いたってことか」
再び蘭が口を開いた。
私は黙って頷いたけど、あることに気づいていた。
「蘭の昔話は聞いてないよ」
果たして、この男が自分の過去の話をしてくれるのだろうかと思った。
けど、皆。包み隠さず話してくれているのだから、
蘭も話してくれる…そんな気がした。
蘭は私と同じように炎を眺めていた。
「俺の話はたいしたことない」
そのセリフは、クリスさんも言っていた気がするけど。
たいしたことないっていうのは、何を基準にしているのだろう?
「蘭の本当のお母さんのことは、訊いても…大丈夫?」
タブーとされる蘭の本当のお母さんの話題。
養父母のスペンサー夫妻に気を遣っているのかもしれないけど。
今なら訊ける気がした。
「俺の本当のお母さんは、凄く美人だった」
蘭は怒ることなく、すぐに答えた。
「じゃあ、実のお父さんは?」
「…ジジイだよ」
蘭が手に持っていた枝を放り投げた。
「俺のお母さんは海の一族の血を引いていたけど、渚とは違って街で暮らすタイプの人間だった」
父親の話をそらして、蘭はお母さんの話をしている。
そういえば、渚くんが言っていた。
海の一族は、海岸沿いで暮らしていたけれども。
一族から離れて、街で暮らす人達が沢山いたって。
「お母さんは料理人だった」
「え?」
サクラが気を利かせて、「夫婦の時間を与えてあげましょう」と言い出して。
私と蘭以外の人間はテントに引っ込んでしまった。
食事を終えて、頭がぼーとするけれども。
やっぱりシュロさんの不審な行動が気になって仕方ない。
「…おまえとサクラが2時間経っても出てこないから流石に心配になって様子を見に行ったんだ」
枝を炎の中に放り込んだ蘭が言う。
急に語りだした蘭に「うん」と頷くしか出来ない。
どんなに疲れていても、この男の美貌はどうして崩れないのだろう。
顔がむくんだりすることもなく、その横顔は常に美しい。
「流石に、全員で行くのは悪いから俺とシュロが様子を見に行ったんだ。そしたら、おまえが倒れてるから…」
「まさか…、見たの?」
あの時、オンセンにつかった状態で意識が遠のいたから100%、全裸だ。
蘭の言葉に、頭が痛くなった。
夫婦とはいえ、蘭に自分の身体を見られるとは…。
「いや。カレンは裸じゃなかった。サクラが真っ裸だったから、シュロがおまえも裸だと勝手に勘違いして現在に至るっていうワケだ」
「…ほんとに?」
「サクラがちゃんと急所をタオルで隠してたから、良かったな」
急所…という、なまなましい言葉に何言っているんだこの男は、と思う。
蘭と目が合った。
言っていることは真実なのだろう。
だけど、恥ずかしい気持ちで顔がみるみると熱くなっていく。
「明日になれば、どうせシュロは忘れちまう」
枝を折って、蘭はまた炎に放り込む。
その言い方が、少し投げやりな気がしたので、嫌な気持ちになった。
蘭が黙ったので、一気にその場が静かになる。
テントのほうからは声が聞こえない。
皆、寝てしまったのだろうか。
ぱちぱちと音のする炎から目が離せなくなる。
「皆の昔話は全部、聞いたってことか」
再び蘭が口を開いた。
私は黙って頷いたけど、あることに気づいていた。
「蘭の昔話は聞いてないよ」
果たして、この男が自分の過去の話をしてくれるのだろうかと思った。
けど、皆。包み隠さず話してくれているのだから、
蘭も話してくれる…そんな気がした。
蘭は私と同じように炎を眺めていた。
「俺の話はたいしたことない」
そのセリフは、クリスさんも言っていた気がするけど。
たいしたことないっていうのは、何を基準にしているのだろう?
「蘭の本当のお母さんのことは、訊いても…大丈夫?」
タブーとされる蘭の本当のお母さんの話題。
養父母のスペンサー夫妻に気を遣っているのかもしれないけど。
今なら訊ける気がした。
「俺の本当のお母さんは、凄く美人だった」
蘭は怒ることなく、すぐに答えた。
「じゃあ、実のお父さんは?」
「…ジジイだよ」
蘭が手に持っていた枝を放り投げた。
「俺のお母さんは海の一族の血を引いていたけど、渚とは違って街で暮らすタイプの人間だった」
父親の話をそらして、蘭はお母さんの話をしている。
そういえば、渚くんが言っていた。
海の一族は、海岸沿いで暮らしていたけれども。
一族から離れて、街で暮らす人達が沢山いたって。
「お母さんは料理人だった」
「え?」