「ある程度、回復したらここから出て行けよ」
 心配しながらも、任務を遂行せねばとマリアは突っ張る。
「……」
 一言も発しないサクラに、マリアはイラッとする。
 一体、サクラが何を考えているのかさっぱりわからない。
 虚ろな目は、死んだ魚と同じように濁った眼をしている。
「アハハハハ。じゃあねー」
 と言って、ジョイは出ていく。
 マリアはサクラを睨みつけた後、小屋から離れた。

「女心は難しいねえ。マリアちゃん」
「…俺、酷いこと言っちまったかなあ」
 サクラから離れて落ち込むマリアに、ジョイは笑い飛ばした。
「あの子、同年代の男が怖いんじゃねえの? まあ、マリアちゃんは女の子だから心配ないよ」
「…あのなあ、ジョイ」
 何度説明すればわかるのだろう?
 よく女に間違われるが自分はれっきとした男だ。

 モヤモヤと落ち込むマリアをよそに。
 サクラは今までの人生を考えるようになった。
 生まれてからの日々、家族との確執。
 クリスとの出会い、楽しかった日々。
 苦痛でしかなかった騎士団学校での生活。
 同級生からの暴行。

 自分はいつだって一人だ。
 いつも、一人だった。
 考える日々は続いた。
 自分は何も悪いことをしていないのに。
 どうして神様は天罰を与えるのだろうか。
 自分は何をやりたいのだろうか。
 未来が見えない。
 叫ぶ、泣く。
 嫌だ嫌だと、走り周り。
 疲れては立ち止まる。

 喉が渇く。
 お腹がすいてしまう。
 …決して、死にたいとは思わない。
 誰かに助けてもらいたかっただけだ。
 この地獄の日々を。
 誰かが助けにきてくれる。
 そう信じていただけだ。

 悲しいのに、お腹はすくし。
 泣いても、どうにもならない。
 誰か、助けに来いよ。
 誰に助けに来てもらいたいの?

 自問自答。
 お腹がすいた。