サクラの精神が崩壊しないでいてくれたのは、クリスの存在が大きかった。
 セレーナは、クリスという呼び名にして、勉学に励んでいる。
 まさか、自分の呼び名を考えていないで、人の顔を見て、勝手に「クリスです」と名乗ったときには驚いたが。
 サクラは考えた。クリスのほうが、自分以上にクリスという名を名乗るのにふさわしいと。

 少年騎士団学校を卒業できたのは意味がわからなかった。
 サクラとクリスは卒業試験をちゃんと受けていなかったからだ。
 受けなかったと言うのが、正しい言い方なのかもしれない。
 担任に言われ、クラスは違ったが。
 特別にと、サクラとクリスは一緒に組んで卒業試験を受けることになった。
 森の中ではクラスメイトに会わないためにも入口地点ですぐに動かずにいた。
 まっすぐと道を進まずに。
 一日中、入口付近で時間を潰し夜を越した。
 2日目は先輩方と戦うことになっていたが、2人は森の中で過ごしていた。
 試験を放棄したのにも関わらず、卒業できることに戸惑いと怒りを覚えた。

 3年間の少年騎士団学校を終えると、次に進むのは青年騎士団学校である。
 連れられてやって来た校内にある一軒家で、目の大きな少年に出会った。
 名前はシュロと言った。
 シュロは素直で騙されやすく、サクラを見て女の子と勘違いした。
 サクラは訳があって、自分は本当は女だけど男として騎士団学校に入ったと説明した。
 シュロは疑いもせずに、すぐに信じてくれた。
 サクラを見るたびに、顔を赤くして接してくるシュロに、
 サクラは何て単純な奴だろうと思った。