その日は、セレーナのおじいさんに乗馬に誘われたので、
 おじいさんとセレーナ、サクラの3人で乗馬をしていた。
 どこまでも続く広い土地。
「全部、ゴディファー家の土地だ」と言われたときには、サクラはいいなあと思った。
 乗馬の練習をしたりセレーナと遊ぶことで一日があっというまに潰れてしまった。

 ちょっとした事件が起きたのは夕方だった。
 セレーナのおじいさんはいなかった。
 セレーナの様子がおかしかった。
 身体が光ったかと思うと、セレーナの髪の毛が肩まで伸びた。
 顔つきが変わっている。
 泣きそうになっているセレーナを見て、サクラはもしやと思いながら。
 自分が被っていたベースボールキャップをセレーナの頭にかぶせた。
「帰ろうか」
 どういう状況かというのを、聞くのは失礼だと思った。
 だが、サクラはなんとなく自分と同じだというのに気づいてしまった。

 翌日、セレーナは真剣な顔をして自分の秘密を打ち明けてくれた。
 改めて、本人の口から性別が変わることを聞かされたときは、驚いた。
 だが、サクラにとっては、驚き以上に自分と同じだという嬉しがあった。
 病院をたらいまわしにされた上に、医師にバケモノ呼ばわりされ、
 家族は自分の存在を否定する。
 ただ、一つサクラとセレーナが違うのはおじいさんの存在だった。
 おじいさんはセレーナの味方だった。
 サクラには誰も味方がいなかった。