身体が女の子に変身してから、ときどきサクラは夢を見るようになった。
 イケメンの男の子だった。
 見たことのない男の子だが、すぐにこの子のことは好きだなと感じた。

 お花畑にサクラと男の子はいる。
 お喋りしたり、駆けっこをして遊ぶのだが、
 何度もそのような夢を見ているうちに、
 クリスは、その男の子を友達だと感じるようになった。

 現実世界で、目の前にその男の子が現れたときは、
 心底、驚いたし。本当に嬉しいと感じた。
 人間よりも動物のほうが多いと言われるこの土地で。
 たった一人のお友達と出会えたのだから。

 男の子と出会った時、
 名前を訊いたら、セレーナ・ゴディファーと名乗った。
 女の子みたいな名前だなと思ったけど。
 自分も、しょっちゅう名前でからかわれてきたから、そんなものかと思った。

 かつて祖父が国王を救った功績として与えられた領地は。
 父の代になって、一年に一度訪れる別荘地となっていた。
 昨年は父の都合で行けなかったが、ここへ来たときだけ自由になれた。
 母は、父に言われてしぶしぶ一緒に来るけど、都会好きのせいか一日と経たずに適当な理由をつけて、妹を連れて帰ってしまう。
 普段、父と話すことはないので何を話せばいいのかわからなかったが。
 父は別荘地に来てまでも、仕事をしているような人だった。

 普段、この別荘地はゴディファー家が管理しているそうだ。
 サクラは思い出せないが、何度かゴディファー家の子供と遊んだのだという。
 セレーナのことは覚えていなかったが、ゴディファー家の当主に乗馬を教えてもらったことは覚えていた。
 こっちへ引っ越してきた際、お手伝いのオジさんに連れられて挨拶に行った。
 ゴディファー家のおじいさんは背が高くて、一見怖そうだったけど。
「困ったことがあったら、何でも言いなさい」とサクラに言ってくれた。

 女の姿になったときは、屋敷から出られなかったが、セレーナに向こうから来てもらうように頼んだ。本当は女の姿のときは誰にも会ってはいけない。そんな母の意見なんて無視した。
 好きなように毎日を過ごした。サクラは、めいいっぱい毎日を楽しく過ごしていた。