父が望みをかけて、あらゆる病院にサクラを連れて行ったが、
 解決方法を見つけることは出来なかった。
 せっかく跡取りとして育ててきた息子が、女の身体になってしまったこと。
 その身体は不完全で時間帯によっては元の身体に戻ることを知らされた母。
 嘆き悲しみ、時にはサクラを殴り蹴り、罵った。
 ノイローゼになった母を見かねた父は、田舎にある別荘でサクラを育てようと決意した。

 それからは、トントン拍子で話は進みサクラは、別荘で暮らすことになった。
 初めのほうだけ、母と妹が様子を見るという形でついてきたがすぐに帰ってしまった。
「クリストファー、女の姿のときは絶対に外に出てはいけません」
 そう言って、汚いものを見るかのようにサクラを睨みつけた。

 都心部で暮らしてきたのとは違い、別荘での生活はあまりにものんびりしていた。
 家族には見捨てられたのかもしれないが、サクラはやっと願いが叶ったと安堵した。
 勉強なんてしなくていい、男らしく振舞うことだってないのだから。