屋敷全体がピカッと光ったと近所の住人たちは口を揃えて言う。
 サクラが部屋で倒れていたのに気づいたのは、母ではなく侍女の一人だった。

 サクラが体調を崩すことは日常的にあったので、話を聞いた母は「どうせ、仮病でしょう」と言って取り合わなかったらしい。
 屋敷にいた者は皆、ぴんぴんしていたがサクラだけ雷に打たれたのかもしれないと慌てた侍女が、サクラを病院へと連れて行った。
 サクラの身体に異変が起きていることに真っ先に気づいたのは医者だった。
 つい、2か月前にも雷に打たれた子供というのが業界で話題になった。
 ティルレット王国の気候は穏やかで、雨が降ることはあっても雷が発生することは滅多になく、雷が室内に落ちて、更にピンポイントで一人の子供に雷が直撃するなど奇跡に等しいことであった。

 医療の世界では解決しないことが起きたのだと、医者は考える。
 前例があることを念頭に入れ、医者は家族を呼び出しサクラの症状を伝えた。
「ご子息は残念ながら、バケモノの身体になってしまいました」
 母は、怒り狂い医者を殴ろうとした。
 父は、それを制止した。