旅を始めて4日目。
眠たい目をこすって、何度もあくびを噛み殺しながら、歩き進めて行く。
一日があっというまに過ぎてしまうのを考えると。
結構、この冒険を楽しんでいるのかもしれない。
だけど、胸はチクチクと痛んで。
皆の顔色をうかがっている自分がいる。
一人ずつ過去を聞き出しているうちに、どんどんと心が麻痺していく。
悲しいはずなのに、その悲しいという感情を保ち続けることなく、
次々と誰かの過去の話を聞いて、また新たにショックを受けている。
この悲しいという感情は、所詮。他人の私が勝手に抱いているだけの感情。
それでも、話を聞いて勝手に傷ついて。
自分で、弱すぎって言いたくなる。
「蘭ったらさー、ずーと寝ないで心配してたんだからね。サクラさんが『あんたが寝なきゃこっちも寝れないでしょうがー』って、鉄拳喰らわしてようやく寝たんだよ」
「…それは、寝たというより、気絶させたのでは?」
相変わらず私は渚くんと喋りながら歩いている。
今朝、蘭にクリスさんと話しているとムカつくと、はっきりと言われてしまった為、渚くんやシュロさんと話している。
結局、蘭と仲直りできたかと質問されたら、
ビミョーなところだ。
あいつは初めから、喧嘩なんてしてませんよーというスタンスで接してくる。
ちゃんと話したいのに、また喋ろうとしたら蘭に触れたいという衝動が出てきてしまう。
だから、ちらちら顔さえ見ることが出来たらそれでいいのかもしれない。
「…それにしても、みんなって喧嘩しないよねえ」
ため息をつきながら、言う。
私は蘭と二度も衝突しているというのに、他のみんなは仲が良い。
「えっ、俺。シュロくんのことそんなに好きじゃないけど」
けろっとした顔で渚くんが凄いことを言い出すので、驚いて渚くんを凝視する。
結構、歩いているのに疲れた表情一つ見せずに渚くんは歩いている。
いつまで森の中を歩き続けるのだろうというくらい、
ずっと、木々を通り抜けている。
この島に来てからずーと晴れているなあと今頃、気づく。
「おい、渚。なんか、俺のこと言ったか?」
前を歩いていたシュロさんが振り返って渚くんを睨みつける。
「シュロくんが昨日の夜、カレンに酷いことをしてたっていう話を聞いてたんだー」
と、渚くんは平気な顔をして嘘をつく。
「俺がいつ、蘭の奥さんに酷い事したって?」
「えー。知らないの? 人妻と2人きりで過ごしたら物凄い罪になるんだよ」
「ちょっと、渚くん!!」
こんな感じで、渚くんはシュロさんをいじめる。
シュロさんは何でもすぐに真に受けてしまうから皆、面白がるのだろう。
見ていると、やっぱりシュロさんはいじられるキャラクターなんだなと思ってしまう。
木洩れ日が降り注ぐ中、だんだん空気が薄く感じるのは疲れているからなのだろうか。
異臭を感じると気づいたのはサクラの一言だった。
「ちょっと、シュロ。あんた、オナラしたでしょ?」
サクラが物凄い形相で「くさっ!」と怒り出した。
「俺はおならなんてしてねえ!」
と、真面目に返事をするシュロさんだ。
…オナラしたところで、こんなに臭いわけがないのに。
いつのまにか木々が減って足元はゴツゴツとした岩場になっている。
卵が腐った匂い…と言えばいいのか。
人生で嗅いだことのない異臭に鼻をつまんだ。
「有毒ガスが漏れてるんじゃ…」
真顔で言い出したのは、クリスさんだ。
「…ガス?」
クリスさんの一言に血の気が引いていく。
「蘭、大丈夫なの。このまま進んで」
渚くんは落ち着いた態度で蘭に訊いた。
進行役の蘭は地図を見て、
「この先に天国があるから大丈夫だ」
と、不吉なことを言い出した。
眠たい目をこすって、何度もあくびを噛み殺しながら、歩き進めて行く。
一日があっというまに過ぎてしまうのを考えると。
結構、この冒険を楽しんでいるのかもしれない。
だけど、胸はチクチクと痛んで。
皆の顔色をうかがっている自分がいる。
一人ずつ過去を聞き出しているうちに、どんどんと心が麻痺していく。
悲しいはずなのに、その悲しいという感情を保ち続けることなく、
次々と誰かの過去の話を聞いて、また新たにショックを受けている。
この悲しいという感情は、所詮。他人の私が勝手に抱いているだけの感情。
それでも、話を聞いて勝手に傷ついて。
自分で、弱すぎって言いたくなる。
「蘭ったらさー、ずーと寝ないで心配してたんだからね。サクラさんが『あんたが寝なきゃこっちも寝れないでしょうがー』って、鉄拳喰らわしてようやく寝たんだよ」
「…それは、寝たというより、気絶させたのでは?」
相変わらず私は渚くんと喋りながら歩いている。
今朝、蘭にクリスさんと話しているとムカつくと、はっきりと言われてしまった為、渚くんやシュロさんと話している。
結局、蘭と仲直りできたかと質問されたら、
ビミョーなところだ。
あいつは初めから、喧嘩なんてしてませんよーというスタンスで接してくる。
ちゃんと話したいのに、また喋ろうとしたら蘭に触れたいという衝動が出てきてしまう。
だから、ちらちら顔さえ見ることが出来たらそれでいいのかもしれない。
「…それにしても、みんなって喧嘩しないよねえ」
ため息をつきながら、言う。
私は蘭と二度も衝突しているというのに、他のみんなは仲が良い。
「えっ、俺。シュロくんのことそんなに好きじゃないけど」
けろっとした顔で渚くんが凄いことを言い出すので、驚いて渚くんを凝視する。
結構、歩いているのに疲れた表情一つ見せずに渚くんは歩いている。
いつまで森の中を歩き続けるのだろうというくらい、
ずっと、木々を通り抜けている。
この島に来てからずーと晴れているなあと今頃、気づく。
「おい、渚。なんか、俺のこと言ったか?」
前を歩いていたシュロさんが振り返って渚くんを睨みつける。
「シュロくんが昨日の夜、カレンに酷いことをしてたっていう話を聞いてたんだー」
と、渚くんは平気な顔をして嘘をつく。
「俺がいつ、蘭の奥さんに酷い事したって?」
「えー。知らないの? 人妻と2人きりで過ごしたら物凄い罪になるんだよ」
「ちょっと、渚くん!!」
こんな感じで、渚くんはシュロさんをいじめる。
シュロさんは何でもすぐに真に受けてしまうから皆、面白がるのだろう。
見ていると、やっぱりシュロさんはいじられるキャラクターなんだなと思ってしまう。
木洩れ日が降り注ぐ中、だんだん空気が薄く感じるのは疲れているからなのだろうか。
異臭を感じると気づいたのはサクラの一言だった。
「ちょっと、シュロ。あんた、オナラしたでしょ?」
サクラが物凄い形相で「くさっ!」と怒り出した。
「俺はおならなんてしてねえ!」
と、真面目に返事をするシュロさんだ。
…オナラしたところで、こんなに臭いわけがないのに。
いつのまにか木々が減って足元はゴツゴツとした岩場になっている。
卵が腐った匂い…と言えばいいのか。
人生で嗅いだことのない異臭に鼻をつまんだ。
「有毒ガスが漏れてるんじゃ…」
真顔で言い出したのは、クリスさんだ。
「…ガス?」
クリスさんの一言に血の気が引いていく。
「蘭、大丈夫なの。このまま進んで」
渚くんは落ち着いた態度で蘭に訊いた。
進行役の蘭は地図を見て、
「この先に天国があるから大丈夫だ」
と、不吉なことを言い出した。