気づいたときには、空が白み始めていた。
 あれ、寝てた? と目を覚ましたときには、後ろでシュロさんが白目を剥いて眠っている。その顔があまりにも面白いので笑いそうになったけど。
 そういや、離れなければと思い出してシュロさんから離れた。

 座った状態で眠っていたので身体が痛い。
 背伸びをして、肩をまわしてみる。
 ボキボキッと身体からビックリするような音が出た。
 昨日落ちたときは、凄く高いところから落ちたと思い込んでいたけど。
 見上げてみると、意外となだらかな坂を転がってきたんだなと安心した。
 …思いっきり落ちていたら、助かるわけない。

 シュロさんがいてくれて本当に良かった。
 …ただ。
 何故、シュロさんは崖の(そば)にいたのかという疑問が今になって湧いてくる。
 それを本人に聞いたところで「知らない」と言われるに決まってる…か。

「おーい、カレーン」

 遠くから、自分の名前を呼ぶ声がしたので。
「はーい。こっちです」
 と、私も大声で叫んで、両手を挙げてぶんぶんと振った。
 少しすると、蘭が走ってこっちにやってきて。
 その後ろに渚くん、サクラ、そしてヨロヨロとよろめきながらやって来たのはクリスさんだ。
 クリスさんは、シュロさんのリュックを背負っている。
 そりゃ、よろけるよなあ…

「大丈夫か?」
 蘭が大声で言った。
「うん、シュロさんが助けてくれたから」 
「そうか。やっぱ、シュロは凄いな」
 良かった…と蘭が頷いた。
「カレン、シュロはどこ?」
 後ろで渚くんが言うので、
「そこの木のところにいるよ」
 と、教えてあげる。

「うわぁ…、寝ちゃってるよ」
 と渚くんが面倒臭そうに言った。
「まあ寝起きよりかは、いいんじゃないの? ちょっと、シュロ。朝よ、起きて」
 サクラが言うと、シュロさんはゆっくりと目を開けた。
「あー? 誰だよ」
 と、ぼんやりとした表情でシュロさんが言う。
「シュロ、おっはよー」
 渚くんがシュロさんに向かって言った。
「あー、どこだよ、ここ。つうか、サクラ、随分と老けたなあ」
 別に、シュロさんに悪気はない。
 だが、サクラは「うっさいわ!」と言ってシュロさんにビンタした。