ローズの身体能力は人間離れしている。
 さっきまで疲れて座り込んでいたくせに、こんなに速く走ることが出来るのだろうか?
 追いかけようにも、あっという間にローズの後ろ姿を見失ったので、
「おーい、どこだよ」
 と叫んだ。

 久しぶりに会えたというのに、また居なくなった。
 何だよ…とシュロがむっとすると。
 誰かの声が聞こえたので、こっちかと走った。
 少し離れたところに、ローズが立っていた。
 ローズの前には3人の青年たちが、ローズに向かって何かを言っている。
「おめえ、邪魔する気かあ?」
 どういう場面だろう? とシュロが考える暇もなかった。
 ローズは、剣を鞘から抜くと、
「うるさい」
 とだけ言って、瞬く間に3人の青年を剣で切りつけた。
「おい…」
 急にシュロは金縛りが起きたかのように、身体が動かなくなった。
 バタバタと倒れていく青年たちを見て、シュロは声が出ない。

 ローズは何か言うと。
 シュロのほうに向かってずんずんと歩いてくる。
 シュロはガタガタと身体を震わせながらも、身体を動かすことが出来なかった。
「俺は、こういう人間だから」
 ローズは、悲しそうに言うと。
「うっ」
 シュロの腹を思いっきりパンチした。
 息が出来ず、うずくまるシュロに、更に頭を何かで殴られる。
 バタリと倒れ込んだシュロに、ローズは言った。

「優しいシュロに、こっちの世界は向かないよ」