青年騎士団学校を卒業した後もシュロは学校の食堂で働くことになった。
 蘭が卒業するまでは、ここで働けと言われたからだ。
 無事に卒業出来たとはいえ、料理補助の仕事をしている自分ってどういうポジションなのだろうと考えたが。
「選ばれし者」ならば、名誉なことなのかなあと簡単に考えていた。

 だが、選ばれし者は何かしらの呪いを持っている。
 現状で、呪いを受けていないのはシュロと渚だった。
「シュロの場合は、馬鹿なのが呪いなんじゃないの?」
 と、サクラに言われたことがあるが。
 もしかしたら、そうなのか? とシュロ自身も思うようになった。
 同じ作業をずっと繰り返すことしか出来ない。
 人の話を聞くことだって出来ないし、難しい話はいつだって理解できない。
 応用力ゼロ。
 自分ではわかっていても、どう努力していいのかわからない。

 渚が、呪いをかけられたと気づいたのは渚が2年生になってからだ。
 元々、小柄な子だと思っていたが、一年に一度行われる健康診断で渚は引っかかり検査を受けることになった。
 身長が1cmも伸びていないというのが主な理由だった。

 一緒に暮らしているから気づかなかったが、
 渚の背丈はずっと変わらないし声変わりだってしていない。
 病院で検査を受けたが、異常なし。
「呪いってどういうタイミングでやってくるのかなあ?」
 渚は小さな声で言った。
 成長しない呪い。
 そんな呪いがあるのだろうか?
「そんなの気にしてたら仕方ないじゃない!」
 と明るく笑い飛ばしたのがサクラだった。
「渚は私の小さくて可愛い弟ちゃんなんだから!」

 シュロは複雑な思いで渚とサクラの会話を聞いていた。