考えてみれば、蘭とローズは目が似ている。
 ぱっと見は全然似ていないが、兄弟だと言われると「確かに」と納得は出来る。

 ローズは普段、大きなサングラスに帽子を被って素性を隠している。
 見た目が目立つから隠しているんだと本人は言うが、
「サングラスしているほうが目立つんじゃね?」とシュロが言うと、
 シュロと喋っているときは、サングラスと帽子を取ってくれるようになった。

 師匠として、約2年近く。
 ローズからは色んなことを教わった。
 まさか、身近にいる人物が蘭のお兄さんだとは思いもしなかった。
「師匠はこれからも、変わらずに俺の師匠でいてくれますよね?」
 ローズの正体を知ってから、気まずいとシュロは思ったが。
 それでも、ローズと今の関係性のままでいたかった。

 木刀でローズと一騎打ちをした後、
 呼吸を乱しながらシュロが質問する。
 ローズはうつむいていたが、
「もう、俺がシュロに教えることはないよ」
 と冷たく言ったので、シュロは「何で?」と大声を出した。

 ローズはじっと、シュロを見る。
 こんなに美しい顔立ちをしているのに、世界最強だなんて誰が信じるんだろう?
 シュロは不安げにローズを見つめる。
「…1つだけ教えてあげるよ」
 ローズはその場にしゃがみ込んだ。
「シュロは優しすぎる。それが、強味にもなれば、弱みにだってなる」
 ローズは草をむしり取った。
「それだけは覚えておいたほうがいい」