シュロの突拍子もない提案に、少年は黙り込んだ。
だが、翌日から毎日ではないが、シュロが一人トレーニングをしていると。
あれはやってみたか? だの、剣の持ち方はこうだの助言してくれるようになった。
一見して、冷たいような人間だと思っていたが。
少年はシュロに優しかった。
いつのまにか、シュロは少年のことを「師匠」と呼ぶようになった。
少年はシュロよりも年下であったが、知識が豊富で強かった。
週に何度か稽古をつけてもらううちに、シュロ自身も強くなっている気がした。
少年がどうして名前を名乗らないか、わからなかったが。
サクラから「世界最強の名前はローズって言うらしいわよ」と教えてもらった。
絶対に教えないと少年が言い切ったのは、名前が女みたいで恥ずかしいということだったのだろう。
毎日がめまぐるしく過ぎていった。
シュロが3年生になると、ルームメイトが2人増えた。
一人は、海の一族だという少年だった。
褐色の肌に真っ黒な瞳。呼び名がないみたいだったので、サクラが「渚」と名付けたようだ。
渚は、毎日のように就寝時、うなされていた。
そして、悲鳴をあげて起きていた。
彼の異常な行動にシュロは戸惑った。
無口で何を考えているのかさっぱりわからない。
そんな渚に対して、辛抱強く優しく接したのがサクラだ。
毎晩、渚が絶叫するたびに、サクラは渚を抱きしめて「大丈夫」と言った。
…自分だったら、サクラのようには出来ないだろうなあ。
シュロは考える。
もう一人は、これまた海の一族の血を引くであろう少年だった。
蘭と名乗る少年は、見た目が渚に似ていた。
褐色の肌に黒い髪。
だが、碧い瞳をしているのが、不思議な感じだった。
蘭の家は伯爵家だそうで、週の半分は実家で過ごしながら身分の高い者達が通う学校へ通い、週の半分をシュロ達が住む家で過ごしていた。
蘭と一緒に護衛のアズマという男も暮らすことになった。
アズマは、背が高く茶色い髪に紫色の瞳を持つ男だった。護衛と聞くと、主の言う事だけしか聴かないというイメージだが。アズマはとても気さくで優しい人だった。
シュロたちは、校内から出ることを禁止されていた。
問題児ばかりを集められた者達の中で、外を行き来できるのは蘭とアズマだけだ。
まあ、手持ちの現金がないシュロにとっては外出が出来たとしても、何も出来ないのだが…。
普段、昼食は食堂で好きなものを食べることが出来るが朝食と夕食はシュロが作っている。食材は、学校からの無料配布なのだが、ショボいの一言に尽きる。
調味料は塩。あとは、野菜と肉の塊、パンを作るためのライ麦粉・・・。
美味しくもない料理を皆にふるまっていることを胸に痛めていたが、どうすることも出来ない。
だが、アズマが来てからそれが一変した。
初めて、蘭がシュロの料理を食べた時、「マズっ!」と言われたのは今でも覚えている。
シュロは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
これから、蘭の食事はどうすればいいのだろうと考えていたところに、アズマが沢山の食糧を持ってきてくれたことに驚いた。だが、最初は蘭だけの食材だと思っていた。
「これで、全員分の食材として…足りますかね?」
見慣れない紫色の瞳でじっとシュロを見つめるアズマ。
シュロは「ほんとに!?」とビックリした。
アズマは、毎回。全員分の食糧を用意してくれたのだった。
だが、翌日から毎日ではないが、シュロが一人トレーニングをしていると。
あれはやってみたか? だの、剣の持ち方はこうだの助言してくれるようになった。
一見して、冷たいような人間だと思っていたが。
少年はシュロに優しかった。
いつのまにか、シュロは少年のことを「師匠」と呼ぶようになった。
少年はシュロよりも年下であったが、知識が豊富で強かった。
週に何度か稽古をつけてもらううちに、シュロ自身も強くなっている気がした。
少年がどうして名前を名乗らないか、わからなかったが。
サクラから「世界最強の名前はローズって言うらしいわよ」と教えてもらった。
絶対に教えないと少年が言い切ったのは、名前が女みたいで恥ずかしいということだったのだろう。
毎日がめまぐるしく過ぎていった。
シュロが3年生になると、ルームメイトが2人増えた。
一人は、海の一族だという少年だった。
褐色の肌に真っ黒な瞳。呼び名がないみたいだったので、サクラが「渚」と名付けたようだ。
渚は、毎日のように就寝時、うなされていた。
そして、悲鳴をあげて起きていた。
彼の異常な行動にシュロは戸惑った。
無口で何を考えているのかさっぱりわからない。
そんな渚に対して、辛抱強く優しく接したのがサクラだ。
毎晩、渚が絶叫するたびに、サクラは渚を抱きしめて「大丈夫」と言った。
…自分だったら、サクラのようには出来ないだろうなあ。
シュロは考える。
もう一人は、これまた海の一族の血を引くであろう少年だった。
蘭と名乗る少年は、見た目が渚に似ていた。
褐色の肌に黒い髪。
だが、碧い瞳をしているのが、不思議な感じだった。
蘭の家は伯爵家だそうで、週の半分は実家で過ごしながら身分の高い者達が通う学校へ通い、週の半分をシュロ達が住む家で過ごしていた。
蘭と一緒に護衛のアズマという男も暮らすことになった。
アズマは、背が高く茶色い髪に紫色の瞳を持つ男だった。護衛と聞くと、主の言う事だけしか聴かないというイメージだが。アズマはとても気さくで優しい人だった。
シュロたちは、校内から出ることを禁止されていた。
問題児ばかりを集められた者達の中で、外を行き来できるのは蘭とアズマだけだ。
まあ、手持ちの現金がないシュロにとっては外出が出来たとしても、何も出来ないのだが…。
普段、昼食は食堂で好きなものを食べることが出来るが朝食と夕食はシュロが作っている。食材は、学校からの無料配布なのだが、ショボいの一言に尽きる。
調味料は塩。あとは、野菜と肉の塊、パンを作るためのライ麦粉・・・。
美味しくもない料理を皆にふるまっていることを胸に痛めていたが、どうすることも出来ない。
だが、アズマが来てからそれが一変した。
初めて、蘭がシュロの料理を食べた時、「マズっ!」と言われたのは今でも覚えている。
シュロは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
これから、蘭の食事はどうすればいいのだろうと考えていたところに、アズマが沢山の食糧を持ってきてくれたことに驚いた。だが、最初は蘭だけの食材だと思っていた。
「これで、全員分の食材として…足りますかね?」
見慣れない紫色の瞳でじっとシュロを見つめるアズマ。
シュロは「ほんとに!?」とビックリした。
アズマは、毎回。全員分の食糧を用意してくれたのだった。