少年騎士団を卒業する際、3年間お世話になった老婆と仮面の男に挨拶をすると。
 老婆と仮面の男は素性を語ってくれた。
 3年間、ほとんど老婆と仮面の男とは会話をしていなかった。
 一緒に住んでいたとはいえ、2人はサクラとクリスの身体の変化について何も質問してこなかった。
 クリスとサクラは、老婆と仮面の男は学校側の見張り役だと思っていた。
 ただ、一体、どこの国の人間なのかがわからなかった。
 服装からして他国の人間であることは明確だし、2人が聴いたこともないような言語を喋っているのを度々、耳にしている。

 男は、白い仮面を取った。
 褐色の肌に黒っぽい瞳。
 男は30代だろうか。
 サクラは仮面の男を見て「カッコイイ」と呟いたので、クリスはむっとした。

「私と巫女様は、見ての通り。この国の人間ではない。とある国からやってきて、捕虜となった」
 捕虜…という言葉に、クリスはぞっとした。
「亡くなった今だから言えるが、我が国王は本当に愚かで阿呆な人間だったよ。この国に無謀に突っ込んで、あっさりと殺されて…」
 やれやれと言いながら老婆は語り始めた。
「あの、お二人はどういう関係なんですか?」
 サクラが質問すると、老婆は考え込むようなしぐさをした。
「うーん。他人っちゃ他人なんだけどね」
「偉大なる巫女様とその護衛です」
 と仮面の男が言い切る。
「巫女って何ですか?」
 クリスが質問する。
「巫女は巫女だよ」
 と言われてしまったので、クリスは黙り込んだ。
「クリスもサクラもよくここまで頑張ってきたね。ただ、これからも辛いことは必ずある。それでも、それを乗り越えた後は必ず幸せになれる」
 老婆は、はっきりとした口調で言ったのだった。