「なっ⁉ げほっ……なにして⁉」

「こうしてヤられんだ。ほこりとか気にしてらんなくなるって」

 ほこりが舞って咳き込む香梨奈さんの両手首を片手で掴み拘束する黒髪は、橋場にも劣らない昏い目をして笑っていた。

「最初見たときから良いなって思ってたんだよ。とりあえず一回ヤらせろって」

「はぁ⁉ 何馬鹿なこと言ってんの? 大体その女が大人しくしてれば手を出さないんじゃなかったの⁉」

 まさか自分が襲われるとは思わなかったんだろう。
 さっきのあたしたちの約束を持ち出して抗議する香梨奈さん。

 でも、黒髪はそれはそれは面白そうにニタリと笑った。

「手を出さないのはそっちの人質の二人。あんたは入ってねぇよ」

「なっ⁉」

 言葉を失う香梨奈さんを見て、確かにそれはそうだけど……と思う。


 あたしはしのぶと遥華が無事なら良いと思ってあの約束をした。

 そこには確かに香梨奈さんは入っていない。

 でも……。


「ふざけんな! 協力してやってるでしょ⁉ あたしに触んな!」

 バシィッ

「っえ……?」

 尚も騒ぐ香梨奈さんの頬を黒髪がためらいもなく打った。

「うっせぇなぁ。良いだろうが、お前は初めてじゃねぇんだろ?」

 心底うざったそうに言い捨てる。